023 内通者

「ああ・・・・やはり・・・・・キーが・・・・」





「残念だよ」


精鋭10人ほどを引き連れたグリーン大臣は、人々が寝静まった刻、王都正門で「ある人物」を待ち伏せしていた。


「どうかなされましたか?グリーン大臣」


「君が内通者だったとはな」


「おっしゃる意味が・・・・・私は門の見回りに来ているだけですが」


「ふむ、私がこんな時間にこんなところにいる、まずはそれに疑問を抱くべきではないかね?」


「・・・・・・・・そう言われると・・・・・・そうですね?何故です?」


「これ以上、間抜けの相手をさせる気かね?ポイント少佐よ」





「・・・・・・何故俺だとわかった?」


「わかるはずもなかろう。君が間抜けな反応をするまではな」


「成程、つまらない手に引っ掛かったもんだな。流石は防衛大臣殿」


「なに、友の入れ知恵だよ。私の力じゃない。しかし、まさか君とはな」


「アンタがいるってことは、軍人だって目星はついてたみたいだな」


「簡単な話だよ。警察でも軍属でないものが門に来るのは不自然すぎる。そうすると頻繁に正門に来る人間、ハンキーは軍の上層部と言ったが、この程度の仕掛けだと君ぐらいの立場が一番動きやすいからな」


「抵抗しても無駄のようだな」


「その通りだ、こいつはアーティファクトでね。会話の記録ができる。便利だろう?」




「あっはっはっはっは!!!」


ポイントは気でも触れたかのように高笑いをはじめた。

しかし、この男はそんなタマじゃない。


「あばよ!他にも内通者がいるかも知れないぜ!せいぜい気をつけな!」


その瞬間、例の魔法陣が足元に現れると、穴に落ちるようにフッと姿を消した。






「すまんなハンキー、取り逃がした」


「構わんさ、奴らはただの愉快犯だ。もう次の悪戯を考えている頃だろう」


「しかしポイントか・・・・・アイツが敵に回ってしまうとはな」


グリーンが眉間に皺を寄せ、こめかみを親指で抑えるのは、本当に精神的に参った時の癖だそうだ。




「資料を見たが、21歳で少佐だって?とんでもない奴だな」


「あの若さで『十傑』の第8席だ。身辺調査もクリアしているが、すまない、軍が甘かった。しかし、あの魔法陣は一体なんなのだ?」


「ああ、『アイツ』の特技さ。それよりも次だ、クランのサポートを頼む。あくまでサポートだ」


「わかっておるよ。お前の考えもな」


「そりゃ助かるぜ。俺は明日から歌わなきゃならんからな」




「あとは・・・・ポイントの家族に連絡を取ってくれ。いや、今から俺が行こう」


グリーンは悲しみを抱いた表情をすると、唇を噛み締めながら答えた。


「そうだな・・・・私も行こう」

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