006 アーティファクトはガラクタ

「みんな今日はありがとう!明後日またハンキーがステージに上がるよ!見逃すんじゃないよ!」


ハンキーは大盛況のうちにステージを終えた。


鳴り止まないアンコールに3回も応えた。


おかげで汗だくで息を切らし、一歩も動けないほどの疲労困憊だった。



「お疲れ様。お陰さんで今日の売り上げは過去最高だよ」


アイダはあの妙な楽器について好奇心を抑えきれなかった。



「ところでアレは一体何なんだい?あんな馬鹿でかい音が出るなんて、もしかして魔法なのかい?」


「遠からず、と言ったところだな」


「真面目に答えておくれよ。明日からみんなに繰り返し話さなきゃならないんだ」


「そうだな。アイダ、君に話したほうが都合が良さそうだ」


「なんだい。もったいぶるねえ」


ワクワクしてたまらないと言った笑顔だ。彼女もまた、ハンキーと同類なのかもしれない。



「あれはアーティファクトさ」


「・・・・・・・もう驚きもしないけどさ、アンタ、一体何者なんだい?」


とことん肝が座った女だ。



「アーティファクト」


古代に栄えた科学文明の遺産。


しかしこの世界におけるアーティファクトは「ガラクタ」同然のものだ。


古い遺跡や土層から出土したという考古学的価値があるだけで、製法も使い道も何もかも、1500年間一切解明されていない。


何故なら、万物に魔力が宿るこの世界で、唯一魔力が微塵も含まれていないものだったのだ。



しかし国の科学・魔法の両研究機関は、そのガラクタを懸賞金を掛けてまで必死に集め、厳重に保管し研究している。税金の投入には批判が多く、多くの資産家や実業家が援助をしているという話だ。


それを所持している?爵位の者でも不可能だろう。あるいはたまたま拾ったのか?



「お伽話の話だろ?大体、アーティファクトは動かないって話じゃないか」


「すまない。今はそれ以上のことは言えないんだ」



豊かな金髪を指でねじりながら、不満そうなアイダが言う。


「わかったよ。でもいいのかい?アタシは聞かれたら答えるわよ?」


「構わないさ。それが目的だからな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る