③ 「色んな意味で死ぬかと思った」

「で、出来たよ……」


 理性が崩壊になりつつも、なんとかヌードデッサンを終わらせる事に成功した。

 

 ただ体温がすごく熱い。

 熱でもあるんじゃないかと思うくらいだ。


 芸術の為とはいえ、女の子の……しかも腐れ縁の裸を見るのは、こんなにも根気がいるとは。


「…………」


「……どうした美咲、もうポーズ解いてもいいぞ?」


「……えっとごめん。私のカバンにポケットティッシュあるはずだから、それ渡してくれる……? 開けてもいいから……」


「お、おう……」


 ティッシュという事はまさか……なんて考えたものの、すぐに美咲のカバンからティッシュを取り出した。

 ソイツは動けないようなので、俺が近付いて渡す形になる。


「う、後ろ向いてくれる……恥ずかしいから……」


「あっ、うん……」


 後ろに向く俺。

 やっぱり美咲って……いや、ここで口にしたら失礼なのでやめにしよう。


「ふぅ、もういいよ。そんで完成した絵見せて」


 振り返ってみると、美咲が自分の裸体にタオルを巻いていた。

 さっきのよりかはマシだけど、「タオルで裸体を隠している」というシチュでさらにエロさが……。


「あまり期待するなよ……こんなんだけど……」


「どれ……おお、すごいじゃん! ちゃんと私の特徴捉えているよ!」


「そうかな……」


「そうだよ! やっぱり真也に任せてよかった~」


 さっきまで恥ずかしそうにしていた癖に、それはもう嬉しそうにする美咲。

 思うところがあるけど……まぁよしとするかな。


「ところでこれどうする? さすがにここに置いておく訳にはいかないし」


「だったら私が持ち帰るよ。大丈夫、保管用にしておくから!」


「自分のヌードを部屋に飾るって事か? すごい勇気いるんじゃね?」


「別に平気だもん。私こんなスタイルよかったんだなぁって再認識できるし」


 お前はナルシストか。


 それとも女の子って、大体そんな事を思っているのかな。

 男の俺には分からないな。


「……ん?」


 そんな事を思っていた時、ドアに取り付けたカーテンに影が差したような気がした。

 ほんの一瞬だったけど……気のせいだったかな?


「ねぇ、真也」


「えっ? ……ああ何?」


「どうだった、私のヌードデッサン。緊張した?」


「……緊張したところじゃないよ。色んな意味で死ぬかと思った」


「だったらいいじゃない。私の裸見ながら死ねるんだから」


「どういう死に方だよ……」


「アハハ、冗談冗談。とりあえずまた着替えるから」


「あ、ああ……」


 美咲が着替え終わるまで、俺はまた顔をそむける。


 俺がいる時によく着替えできるよなぁ……。

 そんな美咲の奴が、そむけた俺へと話しかけてきた。


「もし真也がよければさ、これからもヌードデッサンしていかない? 私をモデルにしてさ」


「……大丈夫なのか? もし描いてる途中に人が入ってきたら……」


「一応ドアには鍵がかかっているし、もし誰かが来たらすぐ着替えて証拠隠滅するよ。真也もなんとかして絵を隠して」


「無茶言うなよ……」


 テンパり過ぎてその絵を壊してしまいそうだな。

 そんな事になったら美咲がガッカリしそう。


「それでどう? 続けていく?」


「…………続けて……いく」


 美咲に尋ねられた俺は、絞るようにそう答えた。


 ヌードデッサンなんて滅多にない事なので、それをやれる内にやりたいという気持ちがある。

 ただほんの少し……ほんの少しだけ、美咲の裸に興奮している自分もいた。


 自分は紛れもなく男なんだなと実感するよ。


「ほんと! よかったぁ!」


「うお!? 前に来るなよ!?」


「おっと、ごめん! つい嬉しくて!」


 着替え途中だった美咲が視界に入ってきた。

 ピンク色のブラが丸見えだったよ!!


 それにしても美咲の奴、どうしてそこまでモデルをやりたがるんだろう……。


 アイツ自身は俺の成長の為とか言っているけど、ちょくちょく無理をしてるのではとも感じてくる。

 かといって尋ねるのもアレだしなぁ。


 あとこれ、本当にバレずにやれるだろうか。

 ……まぁ、カーテンはちゃんと閉めているし、そんな簡単にバレましたってならないか。







「さて、説明してもらおうかしら? この不純異性交遊コンビ」


 翌日。

 俺の言葉がフラグだったのか、すぐにバレちゃいました。

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