第12話 魔物と俺達のこれから。
「俺は2、3回喋ってたよ?」
「あの時は、召喚師としての意思疎通としか………」
召喚師。そんなものまであるのか、この世界。
スライムとの会話が、まさかそれだと思われてたなんて。
ま、問題なかろう。別に悪いことじゃなさそうだし。
さて、どうやってシノンを紹介しようか。
ただのスライム………じゃないしな。
難しすぎるんだな、これ。
「僕の名前はシノン。シノン・ランビリスだ。シャルルの相棒だよ。
内も外も愛くるしいスライムだ。悪さなんてしないよ?」
おっと、シノンが自己紹介を始めた。
何というスライムの愛嬌を生かした自己紹介なんだ。
ま、このまま警戒を解いて仲良くなってくれたら楽なんだけどね!
「ほう、このシノン様の魔力は授与されたものでは無く、ご自身のものだと」
あ、俺が心配するまでもなく、もう仲良しな様だ。
この間に、俺はというと。
「君が、
ありゃ、やっぱり予想通り怖がってるな。
「そう怖がらないでほしいな。
別に取って食おうだなんて思ってないし。
君たちのことは、
飢餓に苦しんでたんだってな。だったら今のうちに沢山食べておくといい。
ここは動物も、魔物も、果実も豊富だから飢餓の心配もしなくていい」
この子達を守るためだったんだ。
「貴方は………なぜ………そこまでするのですか?」
「そこまでって、俺まだそんなに色々とはやってないんだけど。
ま、これから色々するつもりではいたんだけどね」
でも、何でそれが分かったんだ?
別に誰にも言ってないよな?
「我々
特に………私は………特別で………普通は………怒ってる、とか、悲しんでる、とか、断片的にしか分からないんです、けど………私は、何を考えてるか………分かるん………です………」
何か凄い
ぎこち無い会話が気になるけど、これから心を開いてもらえるなら問題無い。
「もー………まん………たい………?」
あそっか、中国語知らないか。こっちの世界には無いもんな。当たり前だけど。
「今はその調子で大丈夫だ。
少しずつで良いから俺のことも信用してくれると嬉しいな。
俺はもうちょっと肉食ってくるから君たちももっと食べなよ。
食べれるときに食べておくんだ」
俺は立上がって少し遠くへ消えた。
「いい人そうだったね。
確かに人間は怖いけど、あの方はどこか私達に似てる気がするわ。まるで、人間じゃないような」
「………うん………」
その時、俺は殺した元族長の死骸を置いた木にまで来ていた。
「一応敵だったけど、ちゃんと弔ってやらないとな。
端っこに寄せるだけなんて可愛そうだし。
『悪食』で食うか」
死骸の周りを黒い靄のようなのが発生し、包み、そして俺の手の中へと吸われていった。
俺は本当にこれで弔えたのだろうか?
《
エクストラスキル『魔弾』『思念共有』『思念伝達』『威圧』を獲得しました。
続いて、種族変転に
ほうほう。こうやって
あれ? 辰爾の時は何も無かったけど、たまたまか?
『いえ、しっかりと辰爾の因子の解析も終了しており、それによる
コモンスキル『放電』『放火』『放水』、エクストラスキル『鑑定』そして、『熱耐性』『感電耐性』『麻痺耐性』『火傷耐性』などがその一部です』
へえ、『鑑定』が手に入ったんだ。
出来れば解析も一緒に手に入ってくれりゃ良かったんだけどな。
だってあれだろ?解析鑑定ってめっちゃ強力な
『元々私が解析を含有しているので、疑似的な解析鑑定は使用可能です』
いいね!
フッフッフ。これで俺は、最強なのだよ。(言ってみたかっただけ)
信頼を得るのにあの読心は厄介だな。
全部が伝わるのってさ、どうしても必要ないことも伝わってしまうわけじゃん?
だからこそ、俺は今こうやって考えているわけで。
『精神保護系の術を用いて相手の読心術を阻害しますか?』
アホっすか?『
そんなことしたらより信頼なくなるでしょうが。
こういうときはもっと感情的に考えるものなのだよ。
『………善処します………』
明らかに拗ねてる。
いや?別にそこまで────ん?
俺が脳内で完結していた『
「先程は我が姫君が申し訳ありません。
さぞ、不快だったでしょう。ですが、あの方の命だけはお助け願えないでしょうか………」
魔物って全員こうなのか?
別に取って食ったりする気は無いって言ってるのに。
心を(断片的だが)読めるならそれぐらい分かるんじゃないのかな?
「だから殺さないって!
俺って何だと思われてんの?」
「いえ、分かっておりますよ。
少々からかってみただけです。
姫君も、貴方様が温かい御方だということは理解されているでしょう。
ただ………」
「ただ?」
「………ただ、これまで負の感情に触れてきた方が多い御方ですので」
何があったかは知らないが、いわゆる事情ってヤツだろう。
「それぞれ事情っもんがあるんだな。
そう考えれば俺らが一番なんにも考えてないやつな気がする」
ささやかにだけである聞こえる宴の声と涼しい風を受けながら俺は言う。
「………ところで、スライムってみんなが皆喋るのでしょうか?」
「え、知らない。
多分そんなことはないと思うけど………。
多分これが特殊個体」
シノンを指差す。
「確かにそうですね。考えすぎました」
「そうだよな。よくよく考えるとスライムって喋るイメージないよな。
一緒に居すぎて忘れてた」
俺とその
三種族間で少しずつ警戒感が払拭されつつある宴の席は、酒と笑いと虫の声が漂う夜と共に刻一刻と更けていった。
あるいはスライムか、もしくは種族無しですが、何か? 〜無種族の俺は世界で唯一、迷宮・ダンジョンをソロで攻略出来るらしい〜 黎ゆ。-伊藤世彬- @syaruyona
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