検死官と学生証

午後になり、学園の授業も終わろうとしている時刻。

「リカルド太陽。お茶はどうだね。」

メネラウス教授に声をかけられる。

「お茶ですか?」

正直なところ、お茶にそこまで興味がなかった。


「ああ、お茶はいい。君に必要だと思う。」

「まあ、それなら。いいですよ。」


1時間後

「感動しました。」

僕は、お茶の道に感動していた。

魔法学園で唯一と言っていいほど、興味のわく授業

それがお茶だとは・・!?


「それは何より。まあ、君も人類代表ならせっかくだと思ってね。」

メネラウス教授は人類文化の先生として、この学園にいる数少ない教授だ。

そんなこともあり僕に声をかけてくれたんだろう。


「流石は冒険王と呼ばれた特待生だ。」

「え?冒険王?」

初めて聞く単語に困惑した。

「ああ、ナイショだったのか。すまない。」

教授は、とぼけたようなそぶりで、笑った。

間違いなくこの教授は、僕が何者か知ってそうだった。

「教授は僕が何者か知っているんですか?」

「さてどうだろうね。」

そう言いながら教授は、僕にあるカードを差し出した。

「これは?」

「ゲシュタルト学園長から預かっていた。君の学生証だ。」

「学生証?」

そういえば死体も持っていたな。


「ああ、私もそうだが、君は魔力を持たないからね。少し古いが機械式の学生証だ。これで学食にもいけるだろう。」

学食とかって学生証がいるのか。

「それは魔法学園より前時代の遺物だが、今となっては使うのは我々人類くらいだろう。」

遺物?インキュベーターと同じ時代の何かということだろうか。


「それでは太陽。いい放課後を!」

そういうと教授は教室を後にした。


「学生証ですか。」

ラブが解析しながら、呟く。

「おそらく、かつてIDカードとして使われていたものでしょう。

今は、魔法による加工がされている可能性が高いと思います。」


「だよなぁ。でもこれ。ロックされてるんだよ。」

検死した時も、ロックされている状態だった。


「ぴー。ロックを解除しました。」

「ゑ?」

「言ってみたかったんですよね。今のセリフ。かつての機械の先輩が言ってきた由緒あるセリフなんですよ。」

なるほど。

茶目っ気のある機械生命体という言葉が合うのかもしれない、このラブという存在には。

「いえ。本当にロックも解除しましたよ。」

「ゑェええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「そんなんで、絵という発音のレパートリーを使わないでください。もったいないですよ。」

変なツッコミが逆に機械っぽいな。


学生証のロックが解除されると、中には昔の所有者と思われるデータが残っていた。

エドモンド?エドモンドさんのカードキーだけれどなんのカードキーだ?

しかもこれ、機械戦争時代の遺物じゃないか。


このカードキーについてはもっと調べる必要があるかもしれない。


「おい!広場で争いが起きてるぞぉ!」

外から生徒の声が聞こえてくる。


「魔道装甲を使った決闘だってよ。」

そんな発言と共に、まだ濃い1日が続くことが確定した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る