検死官人生で初めて学園に通う

「それでは只今より第16回魔法学園アリス入学式を開催します。」

司会と思われる人が、そんなことを言っている。

どこを見てもエルフや亜人、いろいろな種族がいた。

「緊張してるの?太陽〜頑張って!!」

ラブが呑気にそんなことを言っている。

ちなみにラブは最新技術を持ってるらしく、周りからはジャミングで見えていないらしい。

なぜ緊張してるのか?

当然これから特待生の挨拶で僕が喋ることになっているからだ。

舞台袖で緊張していると学園長がホログラム映像のように映し出された。

「学園長のゲシュタルトだ。今年から学園の方針を大きく変える。それに先んじて今年は、人類が2人も学園に通うことになる。」

生徒からは動揺する声。

「まじ?」「魔力を持たない種族だぞ・・」

ふと横を見る。

「フヒィ・。なんですヵ。緊張するので・・、その〜ぉ、あは〜ぁ・・」

隣にいるのも同じ種族の人間らしいが、どうにも微妙な空気が流れていた。

緊張しているからだろう・・・か。


ー3日前ー

インキュベーターが起動してしまって学園の前に立っていると、

「に、人間っ?」

そんな感じで声をかけられた。

それが隣にいる彼女だった。

秋月月子(あきつき つきこ)

特待生であり、人間でありながらなぜか治癒魔法が使えるという異端とも思える力を持っているらしい。

「あなたも、とくぅタイセイ?」

どうやら彼女は、人と話すことに慣れていないらしい。

「特待生?いやちょっとよくわからないんだけど。君は学園の生徒なの?」

「まだ・・・違ぅけど。も・・じき生徒なる。」

「なんか人間同士の会話ってすごく難しいのね。」

ラブはいつの間にか透明になっていた。

どうやら既に、この世界に適応しているらしい。

「ようこそ。アリスへ!」

「えっ。」「へっ」

後ろに、男が立っていた。

それが、魔法学園学園長ゲシュタルトだった。


「人類代表の特待生。君たちの部屋は用意しているよ。太陽君、月子君。入学まであと3日だが、それまでの間にこの学園の環境に慣れておくといい。」

そんなこんなでこの3日間は、部屋を拠点に自分のことを調べるのに時間が経っていた。


ラブがまとめてくれた情報と合わせると、

リカルド太陽15歳の少年は、とある理由でゲシュタルトという人物に推薦されて魔法学園へという情報以外正体不明の人物ということらしい。

僕の名前と同姓同名ということ以外はよくわからなかった。

結局あの死体の謎もよくわからない。

とりあえず検死を続けなければ、これから何が起きるかわからないが、必ずこの学園で僕は死ぬ。

そこだけは確かだ。何とかインキュベーターが外部と接続できたら、事件性の検証をしなければいけない。


「それでは人類代表の特待性のお二人、挨拶をどうぞ。」

舞台袖を出て、拡声器のような魔道具を持つ。

秋月月子が最初に挨拶をした。

「秋月月子です。人類ですぅ。これからよ・・しくぉ・・ねがィします。」

相変わらず緊張が解けないようだ。

仕方ない。僕が挨拶を決めてやろう。


なんだかんだワクワクしていた。

というのも学園に通ったことがない23歳の男がまさか、15歳の人類代表として魔法学園の生活を開始するなんて、言葉にはできない好奇心があった。


「人類代表特待生リカルド太陽。これから3年間よろしくな!」

こうして、検死官リカルド太陽の学園生活が始まった。

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