第4話

「はぁ⁉︎」俺は思わず声を上げた。

「お前んとこの社長って、確かお前が……」

「デザインドだってことは知ってる。むしろ、知ってるからこそ、言ったんだと思う。……ほら、『先祖返り』じゃないけどデザインドには『いじられてない分の潜性形質を持っている可能性がある』から……」

「『思っても見ない子どもが生まれてくるかもしれない』ってあれか? ……てか、デザインドの繁殖能力って『通常人よりも弱い』んじゃなかったか?」

「ん? それは、『デザインド同士の自然妊娠確率が絡んだ都市伝説』か? 何にしてもそれは『どこいじってるか』にもよるからな」

「そうなの?」とダンが聞き返す。

「何か、人間を含めて生き物のDNAっていうのは、『どっかいじるとどっか壊れる』みたいな仕様になってるらしくて。俺自身は自分のDNAの何%をいじられてるかは知らないけれど、おそらく『死なないレベルの最高値』くらいにはカスタマイズされてるような気はする。……確かに、通るもんは通ってるけど」

「……確か、お前の通るもんが通ったのは14の時だったよな?」

「うん」

「ちなみに、通るもん通ってから、実際に繁殖能力が付くまでは約2年かかるらしいよ」とダンが言う。

「……ってことは、シシ。お前には『隠し子の1人や2人いてもおかしくはない』わけか」

「それを言ったら、アル兄には『4、5人いても不思議じゃない』って話だろう?」

「止めろ! 俺は一生、人の親になるつもりはねぇ‼︎」

「それを言うなら、おれだって!」

「……あー、このまんま兄弟喧嘩が始まりそうなら、止めたほうが良い?」とダン。

「あ。ごめん。……それでシシ。何で兄ちゃんのところへ来た?」

「とにかく、社長から身に覚えのないことで問い詰められちゃって、どうして良いのか分からなくなって。それで咄嗟に『長兄が探偵事務所で働いているので相談してきます』って言って。……その、『事件探し屋やってます』とはどうしても言えなくて。だから、無理を承知の上で来たわけで……」

 確かに、俺たちのように「自警団」に所属している人間は、世間的には「身体を動かす以外に能のないやつ」として下に見られがちだ。ましてや、シシのように「1人1人が何らかの才能を持つ世界」に属する人間にとっては、自身の身内のこととは言え、なおさら言い出しづらいのかもしれない。

「一応、『無理ではない』よ。確か団の規則に『警察が介入しない民事案件であっても、急を要する場合は対応して構わない』みたいな条文があった気がする」とダンが冴えたことを言った。

「そうか。それなら、緊急性があるかを判断して、俺らで引き受けてみようぜ」

 そこで俺はアキシーを呼び出すことにした。

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