第22話 俺が命を絶ちたい気持ち

『僕らが保健室出身のワケ』22話

救急車で山井塩が運ばれてから数日後に山井塩は目を覚ました。

その時、山井塩の家族は一緒にいなかった。

連司は塩本人から目が覚めた報告を受けて、病院に行った。

連司は塩に会うと塩はヘラヘラした顔でずっと笑っていた。

そんな姿に連司は言った。

『そんな笑うなよ。すごくすごく心配したんだぞ。それにお前の親クソすぎるだろ。お前が運ばれる直後に話したらくそすぎた』

塩は笑いながら話し始めた。

『俺の親、元々人格否定が酷いから。そんな親の元で育って、俺いつか親と縁を切るって思ってたんだけど、大学のこともあるし、そんな簡単には切れなかった』

連司は塩にあの日救急車で運ばれた日何があったのかと聞いた。

すると塩は答えた。

『あの日...俺は卒業式が終わった日に家に帰って来たんだ。いつものように父親は俺を罵倒して、母親は守ってもくれず...俺、死のっかなって思ってさ。それに、連司には話していなかったけど、俺精神が不安定になって精神科に通ってたんだ。親に死ねとか言われたらもう死ぬしかないのかなって思ってさ。それに18歳で死ぬのも悪くないかなって思ったんだよね。それで、薬を確か300錠くらいとお酒は飲めないからコーラで流して飲んだ。気持ち悪くなって少し吐いちゃったけど、これで死ねるなって思ったけど、最後に連司に電話したかったから電話したんだけど、繋がらなくて...だから留守電残して、その後は母親に発見されて今ここにいるってわけなんだけど、笑えねーよな』

連司は塩の手を掴み言った。

『笑えねーよ。そんなのすべらない話にもならねーよ。親友に死なれたら、俺ずっと苦しいまんまなんだよ。お願いだからもうこんなことしないでくれよ。お願いだよ』

塩は笑いながら言った。

『心配かけてごめん。俺も本当に死ぬつもりとかあったかなって言ったら多分あったと思う。卒業式楽しかったなって思えば思うほど、親からの言葉の暴力が苦しくてさ、吐き出したいけど吐けないんだよ。俺さ、本当は医者じゃなくて心理カウンセラーって言うのか臨床心理士になりたいんだよ。だから本当は石破医科大学じゃなくて石破国際福祉大学に行きたいんだ。でも、親は俺の意見なんて聞いちゃいない。医師になることが1番の価値だって思ってるから。だから、俺決めたんだ。浪人して1年後は親の反対を押し切って石破国際福祉大学に合格する。学費や生活費は曽祖父が出してくれるから大学生になったら親とは縁を切ろうと思う。曽祖父は良い人でさ。俺の気持ちをちゃんと分かってくれるんだ。俺の親って本当くそでさ。俺に普通に死ねとか生きてる価値ないとか言っといて、患者の前ではめちゃくちゃ優しいんだぜ。サイコパスかよって思うんだ。まじ頭おかしいよな』

連司は彼の話を聞いて、言った。

『そんな家族いる中でよく18になるまで平気でいられたな。すげーよ、そっちの方が』

塩はにっこり笑って言った。

『俺、父親から言葉の暴力受けても母親から無視されても祖母と祖父からダメな子と言われても家族が好きだった。ちなみに俺、救急車で運ばれたのは3度目なんだ。1度目は小6の中学受験に失敗した時に3階から飛び降りて骨折して、2度目は中学2年の時に親と喧嘩して親の目の前で死んでやろうと10階から飛び降りて10日間意識が戻らなかったってこと。ここまで聞いたら流石に引くだろ。だから誰にも話していないし、話すつもりもなかった。これで分かっただろう俺ってダメなやつだってさ』

連司は塩を抱きしめた。

そして彼は塩に言った。

『お願いだからもう自分を傷つけるのも家族が嫌いなのに好きなんて言葉使うなよ。もう無理するなよ。お前にひとつ提案がある。浪人する1年間は俺の家の部屋使えよ。俺、一人暮らしするから丁度俺の部屋が空くんだよ。だから、塩お前そこ使えよ。俺の親めっちゃ歓迎するからさ』

塩は泣きながら驚いたが、ありがとうと言った。

塩は思い出したように自分のバックから手紙を取り出し、連司に渡した。

そこには山川連司様と書かれていた。

塩は恥ずかしそうに言った。

『これはさ、俺が死んだ後に開けてもらう遺書だったんだけど、俺生きてるし、お前には悪いかなと思ったけどお前宛の遺書残しておきたくて書いたんだ。でも、もう要らないよな。ビリビリに破いて捨てておいてもいいし、読んでもいいし処理は頼むよ』

連司は曖昧に返事をして、受け取り病室を出た。

電車を待つ間、ベンチでさっきもらった連司宛の封筒を開いた。

そこにはこう書いてあった。

『山川連司様、れんじぃ〜元気?俺も元気。俺はお前と馬鹿やったり保健室でたむろしたり、初めてのピアス開けたり、色んな思い出が詰まった石破高校で出会えたことすごく嬉しかった。もう卒業してちょっとしかたってないけど、俺が死を選んだのは親のこともあるし、これからの将来に絶望したこともあった。絶望っていうのはこの先大学に受かる保証があるのかなってこと。みんなお前なら大丈夫って言うけど、俺はみんなと違って色々敏感で怖かったりする。でも、連司...お前がいてくれるだけで、全ての心配が取り除けるんだ。今までありがとう。それじゃ、来世で会おうぜ。またな...山井塩より』

手紙にポツリと涙が付いた。

連司は手紙を握りしめて泣いていた。

彼は本当に塩が助かって良かったと思った。

山井塩がオーバードーズで病院に運ばれたことは卒業した石破高校の田島先生の耳にも入っていた。

田島先生は山井塩の病室に訪れた。

次の話は田島先生が山井塩と話す話である。

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