第21話 キミといることが幸せだって知ってる
『僕らが保健室出身のワケ』21話
山川連司は家に帰ると母が夜勤に向かう準備をしていた。母は連司に言った。
『連ちゃん、ご飯はチンして食べてね。あと戸締りは忘れずに。それから、ハメは外しすぎないでね。せっかく髪色変化したんだから』
連司は髪を触りながら言った。
『母さん、分かってる...それで話がある』
母はきょとんとした顔で連司の顔を見て言った。
『何、話って?もしかして、恋人ができたとかかな?』
連司は手を振って違うと言った。
連司はモジモジしながら母に話した。
『実は卒業式に来てほしい。あ...来れなくてもいいんだ。でも、俺には大切な日だし、本当は来てほしい』
母はスッと息を吐いて言った。
『その日はもちろん休みにしてあるに決まっているでしょ。行かない訳ないでしょ。心配してたの?もう連ちゃんたら...大好きなんだか行くに決まってるでしょ』
母のその答えに連司は飛び上がるほど嬉しかった。
卒業式は父も母も親子揃って出られる喜びに俺は嬉しかった。
このことを山井塩に伝えたら、彼は作り笑いを浮かべて笑った。
俺は彼が無理をしている時の特徴として、作り笑いを浮かべることを知っていたから彼にまずいことを言ってしまったと思った。
山井塩は俺に言った。
『お前は本当良いやつで家族が来てくれるなんてすげーな。俺もお前みたいに家族に話したら、なんて言われたか分かるか?『大学に受かっていないやつに卒業式みたいなめでたい席に行くことはない』って父と母から言われて、祖母と祖父も親に賛成してて、結果的に来てくれる家族は居ないんだ。俺が不甲斐ないやつだから仕方ないんだ。でもさ...やっぱりさ、来てほしかったなぁ...なんて思ったりする俺って変かな』
そんな山井塩に連司は抱きしめた。そして、連司は言う。
『それじゃ一緒に楽しく過ごそうぜ。親がいなくても、惨めな気持ちにならないように盛大に卒業式盛り上げようぜ。卒業式だけは絶対俺らで馬鹿盛り上がろうぜ...なっ!』
彼らが卒業式当日にした事とは何かと言うと、山井塩はヘアカラースプレーで髪を赤色にして、耳にピアスをして、山川連司はスプレーで髪を青色にして、舌にピアスをした。
彼らは卒業式の卒業証書を渡される時、目立ちたいがために髪色を変えたのだった。
生徒指導の先生にバレないように、黒のかつらをかぶり、卒業証書を渡す時にかつらを取り髪色があらわになった時、周りの生徒も先生もざわついたがもう遅かった。
先生も問題児の彼らに黙認するしかなかった。卒業式の最後に石破高校では生徒の主張として今までの高校生活を振り返ってどうだったかを言う場所があった。
本当は生徒会長が話すのだが、生徒会長は山川連司を推薦した。
そのため、先生からは文句があったが彼が話すことになった。
彼は壇上に上がり、マイクを持ち全校生徒と親御さんの前で話した。
『俺は3年の山川連司と言います。こんな髪型でこんな舌をしてますが、立派な石破高校の生徒です。この石破高校での思い出は沢山あります。例えば自由があり過ぎるあまりタバコを吸って停学になったとかバイクで走っていたら警察とイタチごっこになったとか、他にも数えきれないほど不良な行為をしてきました。でも、受験生になってから全てを捨てました。髪色もピアスも深夜のドライブも全て捨てました。そうすると、おのずと大学には合格出来ました。でも、受験をくぐることが出来たのは先生と友達のおかげがあってこそでした。俺のために叱ってくれた先生たちには感謝しています。そして、こんな格好の俺を友達として受け入れてくれたみんなに...感謝して...ます。生徒の主張...山川連司』
連司は深々と頭を下げたのだった。
そんな彼に他の3年生からは歓声や拍手が上がったのだった。
卒業式が終わり、山川連司は家族とそして後輩の保健室の常連組とも写真を撮った。
山井塩を呼んで保健室のみんなそれからプログラミング同好会のみんなとも写真を撮った。
山川連司と山井塩はそれぞれ後輩から寄せ書きをもらったのだった。
連司と塩はお世話になった生徒指導の先生や担任に挨拶をした。塩は先に帰ると言って別れてしまったが、連司は最後に挨拶したい先生がいたので挨拶をしに保健室に立ち寄った。
保健室の扉を開けると田島先生はいつものように座っていた。
彼は田島先生に言った。
『今までありがとうございました。先生には本当感謝してもしきれないです。また苦しいことがあったら卒業生としてここに来てもいいですか?』
田島先生は言う。
『良いわよ。いつでも来なさい。ここはみんなの居場所なんだからね』
それを聞いて連司はありがとうございますと言って保健室を出て、石破高校の校庭で一礼をした。
そして、石破駅で電車を待っていると花岡美咲が全速力で走ってきた。
そして彼女は彼に言った。
『山川連司先輩、言えなかったことがあります。私、山川先輩のことが好きです。今まで優しく接して頂いたことも全部、嬉しくて好きでした。私と付き合ってくれませんか。無理ならこれはなかったことにでも良いですから』
連司はベンチにでもゆっくり座ったらと手招きし、彼女を同じベンチに座らせて彼は言いました。
『こんな俺で良かったらよろしくお願いします』
彼女は喜んだ。
それを見て連司は言う。
『俺なんかを好きになってくれてありがとう。来年は確か高3だよね。勉強とか分からないことがあったら俺のLINE知ってるよね。俺に電話して。じゃあ、電車来たからまたね。あとで電話するから』
そう言って連司は電車へと乗り込み、美咲に手を振り続けた。
石破駅で出来た新しい思い出だなと彼は思ったのだった。
家に帰り、家族に恋人が出来たことを報告した。母は喜び、父は大事にするんだぞと言った。
連司は初めて彼女と電話した日、長電話になってしまっていた。その間に山井塩から電話があったみたいで、彼の留守電を聞いてみるとおかしかった。
山井塩は言った。
『俺、親にさ...『おまえなんか要らない、死ね』とか言われてさ、俺...生まれてくるべきじゃなかったのかな。俺、お前の前では明るく振る舞っていたけどもうむりかも...今までありがとな..さよなら、れんじぃ』
バタンと何かが倒れる音を聞き、急いで連司は山本学園前駅から直ぐのマンションに駆け込んだのだったが、マンションの前には救急車がいた。運ばれていく塩を見て、なんとも言えない憤りを感じた。救急車に入っていく父親に連司は掴み掛かった。
彼は父親に言った。
『もし、助からなかったら...あんたたち親のせいだからな。何でもっと塩のこと、愛してあげないんだよ』
塩の父親は掴み掛かった手を離して言った。
『私はもちろん愛していた。こいつが勝手に私たちを悪者にしただけだ。大体、君みたいな変なやつと付き合っているのがいけないのだろう。友達は選ぶべきだし、大学に落ちるなんてこの家の恥だ。それじゃあ、病院までお願いします』
連司が塩に会えたのは病院に運ばれてから5日後だった。
次の話は山川連司が山井塩の病室で山井塩の親について話す話である。
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