第20話 変わったら全部変わった
『僕らが保健室出身のワケ』20話
ガラッと保健室のドアを開けたのは山川連司だった。彼は田島先生に向かって、勢いよくテンションが上がったように話してきた。
『先生!俺、俺さ...卒業出来ることになったんだ。卒業単位が足りて、テストも上手くいって、それで大学にも合格したんだ。だから俺、晴れて卒業生になれるんだ』
そんな喜びに満ちた連司に先生は淡々と話した。
『良かったね。きっとご両親も喜んでいると思うよ。大学はどこの大学に行くの?』
連司は言った。
『石破市立大学に決まった。国公立大学で、親にも心配かけないようにずっと勉強してたんだ。タバコもやめて舌ピアスもやめて髪もほら黒髪に染めて深夜バイクで走り回ることもやめたんだ。全部捨てて、勉強だけしてたら受かったんだ。これからは真面目と遊び半分で生きていくよ。でも卒業式に母さんは多分来れないよ。仕事で忙しそうだし、本当は来てほしいけど無理には言えないよ。父さんも仕事あるし、家族揃うとかありえねーから』
田島先生は言った。
『そうかな。卒業式、一応来てほしいってこと伝えてみるのもいいと思うよ。本当に一応ね。それによっては変わるかもしれないし...』
連司はそうかなと首を傾げ、言った。
『まあ、先生の言う通りかもしれないし、一応は言ってみるよ。ありがとう、先生』
そんな話をしていると保健室に山井塩が入ってきた。
彼は連司を抱きしめて言った。
『連司〜、俺浪人することになった。どこも大学受からなくてさ。遊び過ぎたわ、連司はすげ〜よな。ちゃんと勉強してお利口に先生の言うこと聞いて全部を勉強に捧げた訳じゃん。俺、来年は目標とする石破医科大学に合格するからさ』
連司は驚いたように抱きついた山井塩の手を払って言った。
『お前、石破医科大学ってことは医師になるってことか⁉︎ お前なんかが何で医師に』
すると山井塩は首を傾げて言った。
『えっ⁉︎ お前、親友なのに俺の家族が医者ばっかって知らなかったのか。俺は跡取り息子なんだよ。必ず何年かかっても医者にならなきゃいけないんだよ。父も祖父も母も祖母もみんな医者だから。俺も医者にならなきゃいけない。本当息が詰まる家庭だけど、それが普通だった。今年は遊び過ぎて無理だったけど、来年は必ず合格するつもり。俺が大学合格したら遊ぼうな。それから、田島先生も今までありがとうございました。卒業できたのは、先生のお陰でもあります』
山井塩が山川連司にそろそろ授業始まるから行こうぜと促し2人は保健室を出ていったのであった。
卒業式が近づくなか保健室の常連組の2年生は連司先輩のために寄せ書きを作っていた。
また、山井塩先輩にもプログラミング同好会は寄せ書きを準備していた。
次の話は山川連司が卒業式に親に来てもらいたいと親に話す話である。
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