第9話 人の心を変えたのは歌の力
『僕らが保健室出身のワケ』9話
僕はダイゴ•ジェームズ。
今日は文化祭のコンサートに参加する。
今いるのはステージの上手側で、スポットライトが当たる手前に居る。
僕の心臓がバクバクと鼓動が鳴るのを騒がしいステージの目の前で聞こえてくる。
胸に手を当てて田島先生に言われたことを思い出した。
コンサートの2時間前のことである。
コンサートの準備をしていて、コンサートに出る生徒がそれぞれ出ていくなか、僕はコンサートのスポットが当たった瞬間、身体中に鳥肌が立ち、自分が自分じゃないみたいに感じて、周りのコンサート関係者が僕を見ている姿に恐怖を覚え、僕はスポットライトの当たる光から暗闇へと消えた。
周りは大丈夫かと僕に駆け寄って来た。
だけど、僕は下を向いて、小さな声でポツリと『気分が悪くなったので、保健室に行って来ます』と言った。
僕は保健室に入り、田島先生に言った。
『これから、コンサートなんです。でも、前にやったライブハウスでのコンサートよりも人が多くて、スポットライトが僕に当たって、僕だけを見ている人を見たら気持ち悪くなったんです。僕にはやっぱりコンサートに出ること自体無理だったんです。でも、相手に僕の歌を届けた時は本当に嬉しかったです。どうしたらいいのかわからなくてここに来ました』
田島先生は、お茶を一口飲んで言った。
『じゃあ、全部その不安好きな飲み物を一口飲んで、ひと息ついたらどうかな。もし、心臓の鼓動が鳴っている気がしたら、人という字を手に書いて飲むように、好きな味の飲料水を飲んでひと息つくの。どうかな。そしてもうこの場所に居れないやって思ったら、キリの良いところで歌うのを辞めて、目一杯にコンサートを見ている人に手を振って、堂々と保健室に帰ってくるの。どう?いい案だと思うけどな』
ダイゴは田島先生の話を聞いて考えた。
『先生の言う通り、僕の好きなコーラを飲んで不安を消し去ります。ありがとうゴジャイマス』
そして、本番になり僕はバクバクと高鳴る鼓動を抑えるためにコーラをひと口飲み、ステージへと歩き出した。
スポットライトは僕が動くたび呼応した。観客は僕しか見ていない。
この状態がライブなんだって思った。
最初は僕が誰なのかすら観客は分かっていなかった。
でも、歌を終えた後は周りがみんな僕にアンコールを求めてた。
歌って素晴らしいと思ったし、これに驕らず頑張ろうとさえ思った。
僕は文化祭のコンサートをきっかけに、僕をいじめていた子たちから馴れ馴れしく写真を撮ろうと迫られた。その時の写真に映る僕に笑顔はなかった。
こんな裏返しの態度をされること自体、失礼極まりないと思った。
歌は人をも変えるんだとその時感じたんだ。
僕はコンサートを終えてから僕のルーティンが変わった。
緊張が強く出る時は必ずひと口好きな飲み物を飲んでからひと息ついてから歌うことにしたのだ。
でも、コンサートをしたからと言って僕が教室に入ることは無かった。
コンサートで気持ちが変わることはなかったんだ。
僕の歌を聴いて相手が僕に会いたいと思っても、僕は会いたくないのだ。
僕に必要なのは人とのコミュニケーションなのかもしれない。でも、そのために教室に入ることが大切なら僕はもう学校を辞めているだろう。
今、僕が僕でいられたのは他でもない保健室と田島先生と保健室の友達のおかげなのである。
だから、僕はこの先保健室のみんなの為に、歌手として成功する。
次の話は久郷正人くんの帰宅部生活からの脱却である。
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