第5話 学校に行けないのが苦痛
『僕らが保健室出身のワケ』5話
花岡美咲で美しく咲くと書いてみさきと読む。
私が高校生になってから教室に行けたのは2週間だった。
それが私の限界値だった。
私は問題なく毎日学校には通っていた。学校で友達もできて部活にも参加していた。別にいじめとかもなかった。
でも、ある日朝起きれなくなった。
充実した毎日を送っていたはずなのに、頑張りすぎてしまった。
私はお医者さんから『うつ状態』という診断を受けた。
通えていたはずの学校も通えなくなり、部屋に塞ぎ込んでいた。教室で出来た友達が何度か私を訪ねてきたけど、私は友達に会える気分じゃなかった。友達には悪かったと思うけど、今の自分を見せる気にはなれなかった。
でも私の友達は優しくてLINEでは『美咲、私とあんたは一生友達なんだから、忘れんなよ』
口は悪いが私のことを思ってくれる大事な友達だ。
私が家から出なくなってから1週間たった頃、担任が家に来て母と話したらしい。
担任は『学校に来るのはゆっくりでいいですから。まずは保健室登校から始めましょう』
母は私にそのことを伝えて、私は保健室登校をしてみることにした。
私にとって保健室に行くこと自体ハードルが高めだったけど、今では行くのは苦では無くなった。
担任の先生からは教室に入ることもそろそろ考えてみたらと言われたけど、保健室の先生は美咲さんのペースでいいからと言ってくれて助かった。
高校1年の冬、私は友達のおかげもあって教室に入ることが出来た。
その時は、友達とハイタッチして喜んだ。だけど、それも束の間だった。
高校2年になり友達とクラスが替わり、私は1人になった。私は友達を作らないと1人になるという恐怖から教室に行けなくなった。
教室に入ることが出来ず、私はトイレで籠るばかりだった。
そんな時、トイレでいつも隣のトイレにいた子がいた。顔は見えないけど、声だけは聞こえた。彼女は橋本京香だった。
彼女はトイレでよく小説のネタを作っていた。
そんな時隣のトイレを使う花岡美咲に出会ったのである。
橋本京香は言う。
『トイレって落ち着くでしょ。私は保健室の次に好きかな。私、橋本京香よろしく。よく、保健室にいるから良かったら仲良くして』
そんな京香へ壁を叩いて美咲は言う。
『私、花岡美咲。私も保健室登校してる。トイレって1人になれるから落ち着くよね、分かるわ』
壁越しに2人は笑った。
美咲が京香に話しかけた。
『そろそろ保健室行かない?ここだと顔が見えないし、まるで電話越しに話しているみたいだからさ』
京香はドアを開けて、美咲のトイレの前に立って声をかけた。
『じゃあ、いいよ』
美咲はドアを開けて、笑った。
そんな美咲に京香は手を繋いで走った。
美咲は早足になる京香について行きながら言った。
『どうして、走るの?どこ行くの?』
京香は走りながら言う。
『保健室、保健室行くの。ここじゃ喋れないこといっぱい話したいから』
初めて会った2人は保健室という場所で話をした。
美咲にとって京香は保健室の友達になった。
高校2年生になり、行けなかった学校が京香のおかげで、楽しくなったのだった。
保健室という居場所が出来た瞬間だった。
次の話は山川連司くんが田島先生に怒られた時の話である。
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