ニッポン 対 怪獣

結騎 了

#365日ショートショート 245

 人を食う巨大怪獣が現れた。

 鱗のあるアリクイのようなそれは、地中を猛スピードで這い回り、ランダムに都市部に出現した。気づいた時にはもう手遅れで、地中から一気に姿を現わし、長い舌で近くの人間をひゅるりと絡め取ってしまう。平均して日に1.2人が犠牲になった。

 自衛隊が出動したが、有効な対策は取れなかった。諸外国は、自国の問題は自国で対処しろと距離を置いた。

 政府の特別対策室に集まった科学者たちは、ウロクイ(鱗のあるアリクイの通称)に対抗できる唯一の策を発見した。ウロクイの唾液を摂取した人間は、それと同じ大きさに巨大化することができる。取っ組みあってウロクイを倒せばいい。もちろん、勝てる保証も命の保証もどこにもないが……。そう、結論づけた。

 しかし、人選が難航した。特定の自衛隊員のみを命の危険に晒すなと、野党が反対した。プロレスラーや格闘家が名乗りを上げるのは新手の職業差別だと、人権派のインフルエンサーが反対した。身寄りのない高齢者や生活保護受給者に任せろと発言したMyTuberが炎上した。トロッコ問題がSNSのトレンドに載った。誰にも責任を取らせず、誰も責任を取りたがらず、議論は議論のまま膨れ上がった。

 今日も、3人がウロクイに食われた。

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