完成と新戦力 その1
~それから約1か月後~
アルスはエルテラ生産を行う土地へと足を運んでいた。
今日は予定が詰まりに詰まっているから早めに……
考え事をしながら分かりやすい道を進み、森を抜けた先。
前来たときはここら辺にあったような。
途中経過はセバスから定期的に聞いていたものの、作業員の激励の日からエルテラ農場の工事現場に今日まで足を運ばなかった。
一体、どれだけ変わっただろうか。
木々を抜けた先。
視界が急に開け、日の光が多くの場所に差し込んでいる土地に目を向けたアルス。
……これは!
「……凄いな」
するとそこには想像よりも遥かに完成されたエルテラ農地があった。
一か月前とは全く違う。先まで見えない土地の真ん中には広大な農地に、周りを囲む柵。そして、農地の横には軽く作業が出来るスペースに、作業員が寝泊まり出来る寮が2階建てでそこかしこに立っていた。
そして、その奥には頼んでおいた場所も。
この広さなら予定数以上のエルテラが作れるぞ。
前までは切り倒された木々しかない場所であったが、そこに今では直ぐにでもエルテラ生産が出来るという段階まで進められている農場が。
アルスは柵を超え、農場に足を踏み入れる。
この土。
土に目を取られたアルス。
土壌の手入れなんか最低限でいいと言っていたのに、綺麗に耕してあり、しかも、作物の為の肥料も混ぜられた状態。
エルテラは多少雑でも作れてしまう薬草だが、土壌がいいに越したことは無い。
そしてアルスは柵の向こう側に目を向ける。
従業員が暮らす予定の寮も予定の倍以上あるし……最高だ。
セバスに後でお礼を言っておかないと。
こうして、アルスが作業場の完成に感激していると。
「アルス様。お久しぶりです」
この声は。
アルスは声の主を確かめるべく、振り向く。
「ムーさん。わざわざお越しいただいてすいません」
するとそこには、エルテラ事業の仲間である、ファム・ムーがいた。
「なんのこれしき。むしろ、今日まで挨拶に来れず、すいません」
ムーは頭を下げ謝る。
「頭を上げてください。むしろ、こちらからお伺いしなければならいところ……」
ムーさんにお願いをしたのはエルテラ事業の事だけでない。その他にも、ある事を願いしていたんだ。今日まで会いに来れなかったのも無理はない。
「いやいや、私の方こそ……」
「いやいや、私が……」
互いに頭を下げ合い続ける二人。
そうして、謝り合戦の区切りがつき。
「それでムーさん。今日から作業に取り掛かって頂きたいんですが」
「既に準備は出来ています。後は人員をスラム街から連れて来ればいいだけです」
やはり、仕事のできる男は違うな。
「では、その方たちには午後から寮の案内や仕事内容の確認をするという事で。……例の件はどうですか?」
そうだ。俺にとってはエルテラも重要だが、例の件もそれと同等以上に大事なこと。
アルスは息を呑んでムーの回答を待つ。
「ふふっ。もちろん、そちらの方も準備しております。ですが、些か予定よりも多くなってしまいまして……」
ムーはよく聞いてくれましたと言わんばかりに鼻の穴を大きくし、答える。
嬉しい誤算だ。
「本当ですか! 多い分には全然いいです。ただ、前にも言った通り、私が一目確認してからどうかを決めるので」
「承知しております。では、これから一緒に向かうという事でよろしいですか?」
「もちろんです」
~とあるスラム街の一角~
「またスラム街ですか」
ファム・ムーの案内の元、エバンやミネルヴァと共にスラム街へとやってきていた。
「今日はどんな用でこんな所にやってきたんだい?」
いつもはアルスと一緒じゃないミネルヴァ。そんな彼女も連れて来られて、何をするのか気になっている様子。
「それは……行ってからのお楽しみという事で」
多分、ミネルヴァさんもその方が楽しいだろうし。
「何だい。もったいぶっちゃって」
隠された事が気になるのか、笑みを浮かべながら辺りをキョロキョロするミネルヴァ。
今回の件はムーとアルスしか知らない秘密事。
エルテラ事業と同時に進めていた事だった。
「こちらです」
ムーが案内したのは大きな建物。
え、デカくね?
聞いていたよりも大きい建物に案内されたアルス。
「ムーさん。一体、何人集めたんですか?」
「ご覧になれば分かりますよ」
「何人? この中に居るのは人なのかい?」
「どうぞ」
アルス達が困惑している中、大きな扉を開けるムー。
さぁて、中はどんな事になっているかな。
驚きと興奮が入り混じるアルスを出迎えたのは……
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