王都裏オークション メインステージ前編 その2
アルス達はそれからも色々と探して回ったが良いアイテムは見つけられず、そろそろいい時間だからという理由で裏オークションの一番の目玉イベントである、大規模オークション会場へと足を運んでいた。
「うわっ……凄い人混み」
アルスたちの目の前に広がる光景はどこを見渡しても人、人、人。会場全体が多くの人で埋め尽くされていた。
「ニーナ。絶対に俺の洋服から手を離さないでね。エバンとミネルヴァさんも俺から離れないように」
アルスは皆に忠告する。
「何言ってんだい。私が一番心配なのは、アルスが一人で何処かに行かないかだよ」
するとミネルヴァは鼻で笑いながら答えると、エバンとニーナも共感した様に一緒に頷く。
またあの事を……
「ともかく! 俺の後に付いてきてね!」
3人に言われてしまったアルスは顔を赤くしながら、前へと勢いよく振り返り、歩いていく。
そんなアルスが人混みをかき分けてたどり着いたのは、メインステージ会場の入り口であった。
ここが受付か。
「4人分お願いします」
アルスは受付にお金を払うと、中へと通される。
中は結構広いんだな。
「今は……ちょうど7時前ぐらいか。そろそろオークションが始まるはずだからまずは席に着こうか」
会場の広さに驚きながらも、アルスたちは席に着く。
ステージからまぁまぁ近いし、いい席を取れたな。
「外は人で埋め尽くされていましたが、中に入ってみるとあまり人がいないんですね」
エバンが疑問を口にする。
メインオークション会場外では、何処を見渡しても人しかいなかったが、メインステージ会場内は、席の空きも多々あり、そこまで人が見受けられなかった。
「メインオークションに参加したい人は沢山いるはずだけど、全員を参加させちゃうと人が多すぎてオークションが成り立たなくなるらしいから、入場料金として高い金額を払わせる事で、本当に参加したい人とそうでない人を分ける狙いがあるみたいだよ」
アルスは公式サイトに書いてあった情報を思い出して、その話をエバンにする。
「なるほど……。流石アルス様」
エバンは何でもほめてくれるな。
アルスは褒められることにあまり慣れていないが、エバンに褒められるのはそこまで嫌じゃないと感じる。
「そういえばアルス。オークションに出品されるアイテムは確認したのかい?」
そうだった。
「まだでした。えーと……」
アルスは受付で貰った、出品一覧表をエバン達にも見えるように広げる。
「全部で50点位あるらしいですね。最後に出品されるメインの5点はここに書いてない……という事は出てからのお楽しみって事か」
アルスはワクワクした様子で、一覧表をめくる。
「みんな……凄いアイテムが出品されてるよ」
アルスはあるページで手を止めていた。
「これは……指輪ですか?」
エバンが一覧表を脇から覗き込み、不思議そうにそのページを確認する。
「何だい? 私の薬指にでも指輪を嵌めてくれるのかい?」
するとミネルヴァは茶化すかのようにアルスへ聞く。
「いえ、この指輪は自分に嵌めます」
だがアルスは真剣な面持ちで、ミネルヴァに茶化された事に気が付いてないのか、凄く真面目に答える。
「アルス……自分にプロポーズするの?」
そんな一連の話を聞いたニーナは訳が分からないと言った様子で首をかしげている。
あれ……変な誤解を生んでる?
「あっ、違うよ? この指輪の効果を発動させるには自分の指に嵌めなくちゃいけないからだからね?」
アルスは少し慌てた様子でニーナへ説明する。
「はははっ! で、その指輪の効果は何なんだい?」
「この指輪はですね……」
アルスは良く聞いてくれましたと言わんばかりに楽しそうに知識を披露しようとした時。
『皆様! 長らくお待たせしました! 只今より、王都裏オークションのメインステージの開幕です! ぜひ大きな拍手をお願い致します!』
アルス達の会話を遮るようにメインステージの開演の合図となる、演奏が行われ、司会者の挨拶が始まった。
おっ、この声は……
アルスは会場の盛り上がりで自身の声が周りに届かない中、身振り手振りで「あとで説明します」とだけ伝え、ステージへと目を向ける。
『今回、メインステージの司会進行役は私、チャックが務めさせていただきます! では、早速ですが今回の目玉でもある、オークションへと参らせていただきたいと思います!』
やっぱりチャックか。ほんとこの人、何処にでもいるな。
その一言で会場は更に盛り上がりを見せ、こうして王都裏オークションの目玉である、メインステージが幕を開けた。
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