王都裏オークション メインステージ前編 その1
~ニーナが新しい相棒を手に入れたあと~
「リストの武器は何処にもありませんでした」
「私も見て回ったけど、何かピンときた武器は無かったね」
ミネルヴァとエバンがアルス達と合流し、成果を話し合う。
俺の勘だよりだったし、優秀な武器がここにあるという保証は無かったからな。
アルスは二人の成果報告を受け、仕方ないと言った様子で納得する。
「ニーナが持ってるその弓は何だい?」
ミネルヴァはふとニーナが手にしている弓を見る。
「あぁ、この弓は「ニルフェスト」……らしい」
アルスが説明をしようとすると、言葉をかぶせながらニーナが弓の名前を口にする。
「なるほどね。見た目も華やかだし強そうだ。良ければ少し貸してもらえるかい?」
ミネルヴァはニルフェストに興味があるのか、触りたそうに見てると。
「……ミネルヴァは怖いって。この子が言ってる」
ニーナの耳がピンと立つ。
「怖い……? あぁ、武器の声が聞こえるのか。そりゃ残念だ」
ミネルヴァは残念そうにしながらも、視線だけはニルフェストからは離れないままでいると。
ちょっとニーナが嫌がってるな。
アルスはミネルヴァの気を他に逸らすために。
「じゃあ皆。ここにはもう用もないし、違う場所へ行こうか」
ここから離れようと提案し、ニーナに気をかけながらその場を後にした。
それからもアルス達はリストに書いてあるアイテムを探してまわる。
「おっ、珍しい物も売ってるんだな」
アルスはまたも何かを発見した。
「アルス様。これは?」
「あぁ、これはブロルドの果実って言って、状態異常ポーションを作ることが出来る貴重なアイテムなんだ」
アルスは黄色い瓢箪のような果実を手に取り、説明する。
ここでこのアイテムをゲットできるのはラッキーだな。
アルスは予想外のアイテムとの出会いに喜ぶ。
「みんな、ちょっとこれを買ってくるね」
アルスはブロルドの果実を購入するべく、カウンターへ持っていこうとした時。
「あの……。その果実、買うつもりですか?」
フードを深く被った人物がアルスに声をかけてきた。
誰だ?
体格と声からして男。それにアルスが知らない人物。
「えぇ、買うつもりですが……」
アルスは不審に思いながらも答える。
「そうですか……」
するとその男はアルスから一歩引き、トボトボと離れていく時。
「くそっ。やっとブロルドの果実見つけたのに……。違う所をまた探すか……。エルテラはもう大丈夫だとしてブロルドを……」
その男は吐き捨てるように呟く。
なに? ブロルドはいいとして、エルテラを知ってるだと?
アルスが偶然その呟きを聞いてしまう。
「……あのー、すいませ……」
アルスは聞き覚えのある単語を耳にし、すぐに後ろへと振り向いたが、既にその人物は人混みの中へと姿を消していた。
「まさかな……」
「アルス様? どうかしましたか?」
エバンはアルスの異変に気付き、声をかける。
「いや、何でもない。これを購入したら、次の場所に行こうか」
こうして、アルスはブロルドの果実を購入すると、足早に次の場所へと移動していくのであった。
*ブロルドの果実
ブロルドの果実は自然でしか生えていない貴重な果実であり、その木になる実の数は多くて数個と非常に少ない。煮詰めてエルテラと混ぜれば状態異常ポーション(状態異常を治す薬)を作ることも可能であり、そのまま食べてもおいしく食べられる。また栄養価も高いため、人気が高い食べ物なのだが、痛むのが早く、収穫してから3日ほどで腐ってしまう。その為、一般ではあまり流通しておらず、非常に高価な果実となっている。
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