天国と地獄 その2
「今日僕が来たのはアルス君に良い事と悪い事、二つの事を伝えるため」
いい事と悪い事?
アルスの表情が曇る。
「どっちから聞きたい?」
まぁ、どっちからって言われたら……
「……では、良い事からで」
アルスは少し迷ったが、いい方から聞くことを選択する。
「へぇー、アルスは良い事から聞くタイプね。じゃあ良い事は……、はいこれ」
するとアイリスは小さな袋を差し出す。
小袋?
「これは……」
アルスが小さな袋を受け取ると。
「開けてみてよ」
まさか……聖金貨か?
重さから聖金貨だと察したアルスは不思議に感じながらも小さな袋を開ける。
「また聖金貨を私に?」
やはり小さな袋の中に入っていたのは聖金貨だった。
「それね。アルス君の情報で思った以上に成果が得られたから、追加報酬だって会長が言ってたよ。一応10枚入ってるか確認してね」
アイリスはニコニコしながらアルスの表情を観察し、楽しんでいるようだった。
中には……ちゃんとあるな。
「はい。ちゃんとあります。それで……」
「悪い事ね……とうとう王子二人が王様が亡くなった事に勘づいたみたい。それにさ、もうそろそろ貴族の集まりあるでしょ? それがある前にアルス君には伝えておきたいと思ってさ」
「わざわざその為にここまで?」
「もちろん」
アイリスさん……
アルスはアイリスの気づかいに深く感謝する。
「本当にありがとうございます。それで、ゼンブルグ商会はこれからどう動くんですか?」
これから商会がどう動くか知っておきたい。
アルスは商会の行動を視野に入れ、今後の自分たちの動きを決定すべく質問する。
「どういたしまして。これからの私達の動きか……、商会の中でもごく一部の人しか伝えられてない情報なんだけど、アルス君になら教えてあげてもいいかな」
流石アイリスさんだ!
「ありがとうございます!」
「私達はこれから王国中に情報網を張り巡らせて、貴族や領主の動きを探るつもり。もちろん、一番は王子二人の動向をだけど、4大貴族もこれまで以上に注視して見ていくつもりだから」
やはりそう動くか。
王が亡くなったとしたら、貴族たちは王子二人のどっちかに早めにつかなくてはならないと考えるだろう。そうなると貴族同士の深い探り合いが始まるはず。そして最終的には貴族たちはゼンブルグ商会などの情報屋等に頼り、情報戦を制しようと考えるはずだから、紹介にとっては今が稼ぎ時という訳か。
「なるほど。まだ王子二人や他の大貴族の方々には接触してないですよね?」
「うん。接触してるのはアルス君のアルザニクス家だけだよ。それに、王子二人にこちらから接触する事はほぼあり得ないし、他3つの4大貴族にも今はまだ接触しないつもり」
そのことを聞けてホッとするアルス。
まだゼンブルグ商会は他の有力な貴族には接触してないようだな。
4大貴族。この貴族たちは現王(今は亡き王)に厚い信頼を得ていた者達を指す名称で、武のアルザニクス家を筆頭に、政のウィンブルグ家、法のクルジビリオン家、そして情のシャーマス家の4家である。
そして俺が今、一番会いたい人がいるのは政のウィンブルグ家なんだが、この4大貴族は仲があまりよくないことでも有名で、今のお父様の代はそこまで悪くはないのだが、俺のおじい様の世代の時はもう最悪だったという。
「それを聞いてホッとしました。そういえば、王子二人の反応はどうでしたか?」
「アルス君の言う通り、どちらの王子も自分が次の王になると思っているらしいの。それに加えて、二人の仲が益々悪化してきているっていう情報が度々挙げられているから、このままだとよくない方向へ進んでいくのは確かね」
アイリスはあきれた様子で話をする。
「やはりそうですか……」
「それで、アルス君はどちらに付きたいとかあるの?」
アイリスがふと気になった事をアルスへ聞く。
「……アイリスさんも私に重要な話をしてくれたので、私も正直に話します。実は……」
こうしてアルスはアイリスへと衝撃的な考えを口にするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます