天国と地獄 その3
「……アイリスさんも私に重要な話をしてくれたので、私も正直に話します。実は……、私はどちらにも付こうとは思っていません」
アルスは迷わず、どちらにもつかないという衝撃発言をする。
するとアイリスは驚いた様子で。
「アルス君、その選択の意味、分かってるの? 君の家は大貴族よ? まず最初に立ち位置を急かされるのは君達4大貴族なのに」
「えぇ、分かっています。でも、あの二人に付いた場合の王国の未来も嫌というほど知っていますから……」
アルスは目を伏せて、静かに喋る。
「アルス君……。貴方って人は一体……」
アイリスがアルスを見て黙っていると。
「アルス。大丈夫?」
ニーナが突然、アルスの後ろに現れて、頭をなで始める。
「っ! ニーナ?」
驚くアルスをよそに、頭を撫で続けるニーナ。
「離れててって言ったでしょ?」
そう言ってアルスはニーナを離そうとするが。
「だってアルス、辛そうな顔をしてたから……。私はその顔見覚えある。誰にも相談できなくて、自分の中に気持ちをため込んでいる時、人はそんな顔をする」
ニーナにこんな事を言われちゃうなんてな……
あながち間違いではないニーナの答えに、アルスは苦笑する。
「ははっ、そんなこと……」
「アルスはニーナを救ってくれたから……、私もアルスを救いたい……」
するとニーナはアルスを抱きしめる。
「っ!」
ニーナ……
ニーナの思いがこもったハグに言葉を失う。
「アルス……」
涙目でアルスを見上げるニーナ。
なんでニーナの方が泣いてるんだよ。
「……ありがとう。でも大丈夫だよ。まだ大丈夫。大丈夫だから」
アルスは一呼吸、置いたのちにニーナを離すと、アイリスへと向き。
「アイリスさん。もし、4大貴族の誰かがどっちかの王子に付こうとしていたら私に連絡ください。お願いします」
アルスはアイリスへ頭を下げる。
「アルス君止めて。私達はパートナーでしょ? それぐらい私に任せて」
そう言って、アイリスは席を立つと。
「これから王国は大変なことに巻き込まれていくかもしれないけど、アルス君なら周りの人達を救えるって私信じてるから……、ってこんな事を10歳に言うのはおかしいか。でも私、人を見る目だけはあるから……。頑張ってね、アルス君」
「はい……、頑張ります」
そう言い残して、アイリスはその場から去っていった。
頑張ります……、か。
今のアルスには皆を救ってみせますなど、到底言える程、力はない。
この世界はゲームなんかじゃない……
つい最近になって改めてアルスはこの世界はゲームじゃないと実感するようになった。
皆が一生懸命この地で生きている。
何故なら、過去よりもずっと守るべき、大切な人が増えたから。
大切な人たちがいるこの世界を……、グレシアスのラストに起こったような、あんな滅茶苦茶な終わり方は絶対にあってはならない……
アルスの手には自然と力が入る。
たとえ、俺一人になっても……
「アルス、また良くない顔してるよ?」
そんな時、ニーナがアルスの洋服を引っ張り、アルスを現実世界へと引き戻す。
「っ、そんな顔してたかな?」
苦し紛れな表情。
「駄目だよ? 一人で抱えてちゃ……」
一人で抱えてる……、か。
アルスはニーナの一言で、参ったなと言わんばかりの苦笑をする。
そんなアルスとニーナが話をしている最中。物陰から二人を覗く者たちがいた。
「何だいアルス? 楽しそうな話をしてるじゃないかい。私も混ぜておくれよ」
アルスの後ろからミネルヴァが突然、胸を押し付けながら抱き着いてくる。
「ちょっ、ミネルヴァさん!?」
「ミネルヴァさん! もう……、アルス様。私は頼りないですか? アルス様がする事、私にも手伝わせて下さい」
ミネルヴァを追いかけ、慌ててエバンもアルスの目の前に現れる。
「エバンも……」
そうだ、俺は一人じゃなかったんだった。
「アルス様!」「アルス」「……アルス」
皆がいる……、前世とは違うんだ。
心のつっかえがまた一つ取れたのを自覚するアルス。
すると、アルスは口の端を少し吊り上げると。
「みんな。俺が進む道は大変だよ?」
アルスは俺口調になりながら、皆へ声をかける。
「今更じゃないですか」「今更かい?」「私、頑張る」
3人の返事を聞き届けるアルス。
「分かった。じゃあ、聞いてくれるかい? 俺考えを……」
こうして、アルスと仲間達が本当の第一歩を歩み始めるきっかけの大事な一日となったのだった。
~アルスの仲間たちの現在のステータス~
名前 :エバン
武力 :75/90
統率 :52/80
剣術 :75/90
槍術 :11/71
騎術 :03/81
弓術 :03/80
盾術 :35/86
体術 :44/81
隠術 :22/75
智力 :69/89
政治 :43/90
魅力 :52/93
忠誠 :110
野望 :12
突破 :1/3
成長 :S
名前 :ミネルヴァ・バンデスト
武力 :93/94
統率 :92/95
剣術 :81/82
槍術 :93/94
騎術 :86/91
弓術 :21/21
盾術 :15/16
体術 :80/83
隠術 :06/06
智力 :90/93
政治 :91/93
魅力 :90/93
忠誠 :90
野望 :82
突破 :2/3
成長 :S
名前 :ニーナ・ハロウェル
武力 :41/91
統率 :11/71
剣術 :01/62
槍術 :02/71
騎術 :18/81
弓術 :41/91
盾術 :01/32
体術 :03/79
隠術 :04/85
智力 :32/80
政治 :18/81
魅力 :36/92
忠誠 :90
野望 :36
突破 :0/3
成長 :S
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます