ハイエルフの少女 その2

~侵入者襲来時~


「おいお前。アルスって言ったな。今日は先輩としてお前にいい事を教えてやる。いいか、よく聞け……」


 顔を隠した人物は仲間をより自身に近づけ、アルスに語りかける。




 早く鑑定を! ……きた!




「……、え?」

 

 顔を隠した人物を鑑定した途端、アルスは体が固まったかのように動かなくなる。



 

 何だよこれ……


 アルスの鑑定眼鏡にはある表示がなされていた。




 名前:unknownn




 鑑定できないだって!?


 アルスは衝撃を受ける。



 鑑定眼鏡を使って名前が表示されない時は、鑑定眼鏡の効果を打ち消す魔具しかないはずだが……


 いや待て。


 その場合は白塗りで消されたような表示なはず。名前がunknownと表示される事なんて……



 ここでアルスに一つの可能性が浮かび上がる。



 あ……、ある! 一つだけ……、名前がunknownと表示される事が。



 

 この瞬間、フードで見えないはずの相手が笑ったかのように感じた。



 

 それは……




「プレイヤー」


 アルスは小さく呟く。

 




「まさか……、お前……」


 そして、アルスが何かを察した瞬間、顔を隠した人物がある言葉を口にする。






「この世界に来たのはお前だけじゃないと思え……」


 



~~~


 という事があり、相手を鑑定しようとしても出来なかったから、あいつはプレイヤーであると分かったわけだ。


 この情報はグレシアスの大会などに参加しているプレイヤーなら知っていて当たり前なんだが、俺が前世で亡くなってから、10年以上が経過してるんだぜ? そんな設定、すっかり忘れてたよ。


 それ以前に、この世界に俺以外の人間が転生してきているなんて今日まで知らなかったからな。



 ここで、グレシアスに大会なんてあるの? って思った人いるよな。


 グレシアスは基本、1人でのプレイが主流だが、人気過ぎるが上に、世界大会まで開かれたゲームなんだ。その世界大会とは、1マッチ100人規模で行い、その人達の行動や、仲間にしたキャラ、戦争等での活躍などが採点基準になって、10年経過した時点でその人達のランキング付けを行うって感じで順位を決定していた。


 当時俺も大会の生中継等を見ていて、凄い興奮したのを今でも覚えている。



 なに? 俺の順位が知りたいって? 



 実は俺、大会に参加したことが無いから順位は付いてないんだ。でもな、自慢じゃないが、参加していたらいい所まで行けたと思うぜ? 


 アルスは自信満々に胸を叩く。



「胸を叩いちゃって、一体何をやってるんだい?」


「うっ、うわー! びっくりした!」


 そんな時、ミネルヴァが後ろから声をかけてきた事への衝撃で、驚いた声を出すアルス。


「そんなに驚いちゃって……、何か変な事やってたんじゃあるまいね?」


「違います! 急に声をかけてきたから驚いてしまっただけです!」


「そういうことにしといてあげるよ」


「だから!」


 アルスが顔を赤らめ、反抗していると。


「アルス様。お客様がお待ちです」


 後ろからエバンが歩いてくる。


「お客?」


「はい。オークションのオーナらしいです」


「……そうか。今行く」


 アルスは格好を整え、扉へと向かう。



 まぁ、どんな用事でここまで来たかは予想は付くけど。



 するとそこには……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る