ハイエルフの少女 その3

 するとそこには……


「本当に申し訳ありませんでした!」


 深々と頭を下げる人物がいた。


「あの、貴方は?」


「あっ、申し遅れました。今回、このオークションを取り仕切らせていただいていました、ルーンと申します。この度はVIP席を購入していただいたのにも関わらず、侵入者を許してしまうという杜撰な警備体制。誠に申し訳ございませんでした!」


 あー、なるほどね。


 アルスは状況を理解する。


「大丈夫ですよ。これからはこのような事が無いようにしていただければ……」


 アルスは早く屋敷に帰りたいという思いから、相手を許す方向で進もうとした時。


「それはもちろんです! ですが、アルザニクス家の方を危険にさらしたとなったら……」



 アルザニクス家の影響力は甚大。つまり、この件が表に出たらまずいから、どうにか俺を丸め込もうとしている訳か。



 まぁ、下手したら命が無かったっていう可能性もあったわけだし、少し遊ぶくらいならいいよね?


 アルスは相手の真意に気が付くと、ニコッと悪魔的な笑みを浮かべ、次々と会話を続けていった。




~数分後~


 そこには、ほくほく顔のアルスと、生気を失い、干からびた様子のオーナーがいた。


「では、これからアルザニクス家対してはVIP席を無償で提供すること。また、今回のVIP席代は無料という事で」


「は、はい……」



「アルスもえげつないことするね」「流石アルス様です」


 両極端なミネルヴァとエバン。


 そんな時、ふとある事を思い出す。


「そうだ。私が落札したハイエルフの少女はどこにいるんですか?」



 そうだよ。別にVIP席無償はついででしかない。これが一番重要だからな。


「あっ、それでしたら……」


「アルス様。お待たせいたしました。落札されました奴隷を連れてまいりました」


 そんな話をしていたら、オークション関連の従業員がちょうど、ニーナを部屋に連れてくる所だった。


「では、ハイエルフの少女はこちらに。また次回も王都オークションをよろしくお願いいたします」


 口早にオーナーは喋ると、ニーナを置いて、その場をそそくさと去っていってしまった。



 あっ、逃げられた。


 そんな逃げていくようにオーナーが去っていくのを見届けたアルスは。


「ちょっとやりすぎちゃいましたかね?」


「今更かい?」


 ミネルヴァが呆れた様子でアルスへと答える。


 そして、ミネルヴァはニーナの方へ振り向くと。


「それで……、この子はどうするんだい?」


「もちろん、仲間になってもらうつもりですが」


「そうじゃなくてね」



 あぁ……


 アルスはニーナへ視線を向けると、小さく縮こまり、どうしていいか分からず震えているのが見えた。



 俺としたことが。


 アルスは一人の心細さを十分に理解する者として、ニーナへと心の中で謝罪する。



 こういう時は……

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