超越種 その2

~今から少し前~



「っっ! あの少女だけは必ず手に入れないと」


 アルスは超越種と呼ばれる、ハイエルフの少女のステータスを鑑定し、驚愕した様子で呟く。





 名前 :ニーナ・ハロウェル

 

 武力 :41/91

 統率 :11/71

 剣術 :01/62

 槍術 :02/71

 騎術 :18/81

 弓術 :41/91

 盾術 :01/32

 体術 :03/79

 隠術 :04/85

 

 智力 :25/80

 政治 :16/81

 魅力 :35/92

 忠誠 :40

 野望 :36


 突破 :0/3

 成長 :S





「ステータスが強すぎる……」


 アルスは驚きから、口が開いたままになっていた。



 どの項目も常人を上回るステータスに、弓術にいたっては初期から90を超えているというぶっ壊れ仕様。更に突破回数は驚異の3回に、成長はS。


 素質ならエバンと引けを取らないな。


 

「欲しかった射手の素質を持つ者とここで出会えるなんて……」


 アルスの表情は自然と緩み、笑みが零れる。


「あの子は弓使いなのかい? 見た目じゃ私には分からないけど、何か才能的なモノはビシビシと感じるよ」


 強者特有の勘からか、ミネルヴァがハイエルフの少女、ニーナを見て言い放つ。



 弓術だけじゃない


 隠密の潜在値も高いし……、これだったら良いハイド弓使いになれるかもしれないな。



 『ハイド弓使い』


 戦場で物陰などに隠れながら敵司令官や敵主力を弓で撃破する者の事をグレシアスのプレイヤーが呼称したモノである。


 ハイド弓使いに求められることは、弓術と隠密のステータスが高さ。グレシアスをプレイしていく中で、この者の存在は戦況を大きく左右しえるほどの影響力を持っている為、序盤、中盤、終盤と、どれをとっても必須な人員なのだが、如何せん入手難易度が高い。


 その理由は、弓術と隠術の両方を得意とするキャラがグレシアスの世界では少ないためだ。


 弓術か隠術、どちらかの高ステータスを持っているだけでもこの世界ではとても貴重なのに、その両方のステータスを高水準に備えているニーナに今ここで出会えたことはアルスにとって奇跡に近かった。



「絶対……、絶対にあの少女が欲しい」


 アルスは大きく目を見開き、自身に言い聞かせるように言う。



 これから戦争を生き抜いていく上で、喉から手が出るほど欲しい人材。


 全ての財産を失う事になろうとも……、絶対に落札して見せる!



 アルスの手に自然と力が入る。



 ふー、焦るな焦るな。深く深呼吸。


 スー、ハ―、スー、ハ―。



 精神を落ち着ける為、その場で深呼吸をし、ステージ上を見る。



「今は聖金貨5枚……、まだまだ想定の範囲内だから大丈夫」


 アルスは今一度、小袋の中の金を確認し、ボードに聖金貨6枚と書いて掲げる。



『ここで……、11番様が聖金貨6枚です!』



 このまま終わって……



『おっと! ここでまた、6番様が聖金貨7枚です!』


「また6番か!」


 アルスは舌打ちが出るのをグッと我慢し、更にもう一度自分の手持ちを確認する。



 俺が使える金額の上限は聖金貨20枚。ほんとは22枚までなら使えないことも無いが、何かあった時用に聖金貨2枚は取っておきたい。いや、そんなことは言ってられない。最悪、聖金貨22枚全てを失う事になろうとも……



「……ハっ! 冷静になるんだ」



 それにしても……、6番がどれ程、金を用意してきてるか分からないのが不安だな。



 さっきからあいつは俺が落札しようと考えていた者ばっかり狙ってきて……



 ここでアルスは先ほど思いついた最悪の事態を思い出す。

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