超越種 その3

 待て。これまで6番がわざと俺に落札をかぶせてきたのではなく、最上級の鑑定眼鏡を使って、ステージ上の者たちのステータスを確認していたとしたら……



 悪い考えが段々と現実味を帯びて、アルスに焦りが生まれ始める。



 でもその可能性は低いはず。


 最上級の鑑定眼鏡は値段も高いし、王都のオークションでも中々手に入らない貴重なアイテムだ。


 でもどうする……、もしあいつが最上級の鑑定眼鏡を所有していて、尚且つ俺以上に資金を所有していたら……



 アルスの顔に汗がにじみ始め、不安とイラつきが増していく。


 駄目だ。悪い想定ばかりしてしまう。



『このまま6番様がフィニッシュを決めるのか!?』


 ヒートアップしたナレーションによって現実に戻されるアルス。



 止めだ止め。ひとまずは入札を続けないと。



 一旦考えることを止めて、オークションに集中するアルス。


『またも11番様が聖金貨8枚です! これはもう、6番様と11番様の一騎打ちに突入したか!?』



 ニーナの落札争いに参加するのがアルスと6番の二人になった時。



『なんと! 6番様が一気に聖金貨15枚を提示してきました! このオークション始まって以来の最高金額です!』



 オークション会場全体にどよめきが沸き起こる。



 アルスはビクッと体を硬直させ、肩を落とす。


「アルス様……」


「エバン、待ちな。アルスは真剣に悩んでんだ。それに、今のアルスは大丈夫さ。ちゃんと考えている」


 エバンがアルスに近づこうとしたが、それを止めるミネルヴァ。



『11番様や他のお客様で、これ以上の金額を出される方はいますか……? 今の所は居なさそうですね。では、カウントダウンに移らせていただきたいと思います。10……、9……』


 刻一刻とカウントダウンが進む中、アルスは動かない。そして……





『4……、3……、2……』


 カウントダウンが終了しようとしたその時。





 ゆっくりと立ち上がったアルスは、瞬時に金額を書き込み、ボードを掲げる。





 『おっと!!』


 

 またもや会場に歓声が沸き上がる。






『っ! なんと、11番様が聖金貨18枚です! またも王都オークションの最高金額を塗り替えてしまいました! 本日は凄い事ばかり起きますね! これ以上の金額を提示する方はいませんか? ……では、カウントダウンに移らさせていただきます! 10……』


 司会進行役のかけ声とともにまたしてもカウントダウンが始まり、観客の歓声が徐々に小さくなっていく。



『6……、5……、4……』



 早く終わってくれ……



 アルスは目をつぶり、体の目の前で手を組む。




 まだか? まだなのか?




 一秒が長い。



 アルスにとって、永遠ともいえる時間を目をつぶりこらえる。


 

 あれ? 何か聞こえる……



 これは……、歓声か?



 集中しすぎにより、外界の音がアルスに届いていなかった中、突然、小さいながらも何かを祝福する歓声のようなモノがアルス耳へと届く。

 


 するとアルスはその歓声の正体が気になり、覚悟を決めて目を開ける。



 するとそこには……

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