第13話
開発部と書かれた看板がある。
「ここだ。
何をする所なんだろう」
開発という事は製品のアイデアを出すところなのだろうか。
扉をノックし部屋に入ると、20ぐらいの男が難しい顔をして悩んでいた。
彼の胸元に名札に"開発部長シーオ"と書いてある。
彼が上司と言うことは間違いない。
「あの、本日付で配属されたのですが……」
シーオの印象はイケメンで何でもできそうだった。
身だしなみも整って彼女とデートでも行くのかと思えるようなビシッとした格好だ。
見た目が良いと能力も優れていると思ってしまうのは偏見かもしれない。
印象はやはり大きい。
「ああ、聞いている。
丁度良かったこの製品がどうして売れないのか考えて欲しい」
「はい、見せてください」
シーオは河童の皿みたいな帽子を頭に装着して見せた。
印象のギャップが激しく少し笑いそうになった。
そこで笑ったら今後に響くだろう。
絶対に笑ってはならないと必死にこらえた。
「これは雨から身を守ってくれる魔法具なんだ」
「なるほど……」
河童と合羽を掛けた冗談みたいな感じだな。
そんなお笑いみたいなモノは別に買いたいとは思わない。
それを素直に言うべきか。
悩んでいる間もシーオは説明を続けていた。
「雨の日は傘を片手で持たなくては成らず強風が吹けば壊れる。
そんな煩わしさもなく両手が使えると言う素晴らしい商品なのだ」
「素晴らしいです」
拍手を送りヨイショを忘れない。
今クビになると借金しか残らない。
これも仕事を続けるためだ。
「忌憚のない意見を言ってくれ」
頭が禿げて見えるなんて言えるわけないような。
それを言った所で何の特もないだろう。
「麦わら帽子をつけて、日除けと雨避けを兼ねさせるのも面白いと思います」
「確かに雨の時しか使えないより、長く愛用出来ることは大きなプラスになるな」
まあダサいとは言えないし、理由を誤魔化せて一件落着だな。
シーオは以前俺が作った扇風機を床においた。
「なんでここに……?」
「不思議な事をするものだと関心していてな。
「ルーン?
それは何でしょうか?」
シーオは2枚重ねになった円盤を台においた。
魔気を注ぐと、円盤が回転し始めた。
「この通り、回転させるだけならこれで十分だ」
「うわっ……知りませんでした。
そんなモノがあると知っていたらこんな苦労はしなかったのに」
時間が無かったし、深く知ろうとしなかった。
知らない魔法がまだまだ多くあるというのに。
「君には知識が無いようだがアイデアはあるのだろう?」
とても欲しいものがある。
それは冷蔵庫だ。
「氷、冷却する魔法が知りたいです」
「残念ながら、熱を発することは出来ても、
氷を作れるほど冷やすことは出来ない」
「つまり存在しないと言うことですか?」
「残念ながら、魔法と言っても万能ではない。
自然の法則に縛られている」
「では圧力を掛ける魔法はありますか?」
「勿論だ、任意の重さにすることが出来る」
シーオは棚から丸い石を取り出した。
それを受け取ると急に重くなっていくのを感じた。
「やった……、これなら作れる!」
液体に圧力をかけると熱を発する。
そして圧力から開放すると熱を奪うのである。
箱の外で圧力を掛け、内部で開放することで箱の中の温度を下げる。
それが冷蔵庫の仕組みだ。
「いい顔だ。
どんなものを思いついたのか詳細を教えてくれ」
シーオは真面目で研究熱心だった。
知識も豊富で俺の意図を汲み取り最善の案をだしてくれた。
ものづくりしている時は最高に高揚する。
どんどん形となっていくのだ。
シーオの手助けもあって、制作するには時間はかからなかった。
だか完成した冷蔵庫は期待外れだった。
「うーん……、やや冷たくなっているけど、
思ったよりも冷えない」
「圧をかければ漏れ出てしまうようだ。
金属の加工技術の限界だろうな」
問題はそれだけではない。
熱が入りこみ冷却効果が薄くなっている。
「断熱する方法が思いつかない。
真空を作れば熱を伝えないんだけど」
「ほぉ、面白い話だ。
聞かせてくれ」
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