3章
第11話
魔法の書は革表紙に金属板と魔石が埋め込まれている。
それによって内部に刻まれている魔法を行使する。
その魔石の検品が俺の仕事だった。
骨と皮しかないしわくちゃの老婆がその作業を行っていた。
「お若いね、幾つかい?」
「俺は10です」
「ほっほっほ……、ではここに書かれている項目を一つづつ確認して印を入れていくんだよ」
検査する項目は100を超えている。
重さや大きさ強度等の俺でも解る項目や、魔気の量と言ったよく解らない項目まである。
細長いテーブルの上に専用の器具が並んでいる。
一つ作業を終えれば、次へと魔石を持って移動する。
老婆は丁寧に一つ一つ、確認の方法を教えてくれた。
それを覚えるだけでも大変だ。
工程を熟すだけでも時間が過ぎ、魔石2つの検品を終えるだけで昼食の時間となりベルが鳴る。
「休憩の時間ね。
食べ盛りだからお腹がすいているでしょう」
「まあ、……」
そんなに動いてないから減ってないと思っていたが、お腹がなる。
簡単そうでも意外と疲れるんだな。
作業はずっと立って余り歩かないせいか、気づかないうちに疲労がたまるのだろう。
老婆は色々と雑談をしてくる。
正直な所は興味ない話をされるのは好きではない。
何処から来たのかとか、何が好きなのかとか、知ってどうするんだという事ばかりだ。
仕事場は金を貰うだけではなくコミュニティの一部で楽しむ場でもあるのかもしれない。
仕事だけ頑張れば良いと考えている俺とは合わない。
適当に話を合わせてることにした。
「所でアンズお嬢さんにあったかい?」
「はい、とても可愛い感じでした」
特に髪型が好みで愛らしく見える。
それに母に似ているのがポイントが高い。
将来的に超絶美人になるのは確定しているようなものだ。
ただ性格は、今の所はよく解らないと言うか余り良くない。
「もしかして気があるのかい?」
「うーん、アンズさんの方は無関心な感じだったので、脈はないかな。
好みの見た目なんだけど」
「ほっほっほっ……」
何処行っても女は色恋が好きなんだな。
前世は独身だったから、結婚しないのかとか色々と言われたな。
そういうのはお節介なんだよ。
雑談であっという間に休憩時間が消えた。
ううっ……、時間を潰せたのはラッキーと考えるべきなのか。
休憩が終わると仕事に戻る。
後は作業を淡々とこなし終業時間を迎えた。
「お疲れ様、慣れない内は難しいかもしれないけど。
慣れれば楽しい作業だから頑張って続けるんだよ」
仕事は淡々とやって居たら気がついたら終わっているものだ。
全力でやっているが頑張っている感じはしない。
ああ、もう終わってしまったんだと思うぐらいだ。
「はい、ありがとうございます」
自室に戻ると作業が脳裏に浮かんでくる。
どう考えても効率が悪い。
色んな器具を使うのも手間だ。
そう思うと不満は次々と浮かんでくる。
「良し、改善するか」
少し魔法というものを感じて似たものを知っていることに気づいた。
プログラム言語だ。
文字で命令し一定の法則に従い実行して行くところが似ている。
器具の殆どが魔法具であり、測定に関する魔法が使用されている。
それを解析し、一つに統合できれば座って作業することも出来るはずだ。
「式が浮かんでくる。
流れを読み形にするだけだ」
プログラムを例えるなら水の流れに似ている。
田畑に水路から水を流すイメージが近いか。
水田に水を流すと、水田が大きれば大きいほど時間が掛かる。
水源からどの水路を使い効率よく水を分配し流すのが良いのかを考える感じだ。
「こいつはワクワクするな。
便利な道具を作れば楽ができる」
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