第8話
与えられた情報はほぼ無きに等しい。
魔法の知識ではどうしようもない。
なら前世の知識ならどうだろうか。
それには道具が必要だ。
今あるものは何か。
鉱山での報酬として原石がある。
それに母から貰った
これは古くなって使わなくなった物で鉄板部分がすり減り全体的に亀裂が入っている。
解体して中身を確認するには都合がいい。
新品なら壊してしまったら勿体ないが、これは捨てても構わない物だ。
後は、魔女から頂いた杯もあったな。
「この水は特別なものなのか?
それとも飲水……」
少し舐めて味見したい気持ちもある。
腹の中で動き出して暴れたり人体に悪影響があるかもしれない。
安易に得体の知れない物を飲むのは危険だ。
悩んでるといつの間にやって来たのかアンズが側に立っていた。
「その水は飲んでも大丈夫よ」
そう言うとアンズは杯を手に取り、軽く口に含んだ。
俺は杯を受け取る。
これって関節キスになるんじゃないのか……。
もしこれを拒否すれば嫌われて、居づらくなるかもしれない。
ええっい、飲むしか無い。
口を近づけようとした時、水が動き人の形を取った。
そて手をバツにしたりと手を振り拒絶している用に見えた。
「なんか、水が拒んでいるみたいだ」
「貴方って、精霊に好かれているようね。
ええ、それに塩を入れたわ」
「塩を入れれば、こんな事ができるのか?」
「精霊に関することは黙っていなさい。
もし話せば変人として見られるから……」
「教えてくれてありがとう」
杯の水を口に含む。
「しょっぱい……、まるで海水だ」
アンズは言いにくそうにうつ向きながら言う。
「その杯は返してくれる?」
「良いよ」
甘い思い出にならずしょっぱい思いを下だけだ。
「これは父の形見なの」
ええっ、そんな大切な物に口をつけて良かったのか。
なんか悪い気もしてきた。
ハンカチで呑み口を拭こうとするとアンズに手を掴まれた。
「拭かなくて良いから」
「でも汚れたまま返すのは……」
言いかけて、素直に杯を渡した。
親切が余計なことだったら迷惑になる。
彼女に従っておくほうが賢明だ。
アンズは杯を手に持ち、ぼんやりと俺の様子を見ている。
なんか見られていると緊張すると言うか恥ずかしい。
かと言って追い払う訳にも行かない。
ああっ……。
時間がないんだ。
出来ることから始めよう。
加熱石版を解体するところから始めた。
中は簡単な構造になっている。
手前に宝石が嵌められた金属板がある。
そして文字が刻まれた黒い円盤が3つ並んでいる。
この円盤が熱を発する魔法が刻まれれているのだろう。
その下にS字に金属の線がある。
「この宝石から何かしらエネルギーが発生して、このS字の金属に流れるんだろうか?」
「
魔法の源と言えば解るかしら」
電気みたいなものか、電気はループ状になっている必要があったな。
こんな一方通行みたいな流れじゃない。
「なんとなく解った」
未知だった時は、理解できるのかと不安になった。
それは恐ろしい化け物、怪獣と言ってもいい。
食い殺されるかもしれないという恐怖が戸惑いを生む。
その先にどんなに素晴らしい楽園があったとしても進めない。
偉い人は言う、知識があれば危険を犯すこともない。
だが俺は危険かも知れなくても進まなくちゃならない。
何故なら俺は愚者だからだ。
無意識にアンズの顔を見ていた。
俺は褒められたかったのだろう。
愚かでも怪獣に向かって行ったことを。
アンズと目が会うと、彼女は微笑む。
「光る文字を指で軽く弾いてみて。
もし感じることが出来るなら少しは見直すわ」
アンズの指示に従い、軽く文字を弾く。
だが何も感じるものはない。
「……解らない」
アンズは残念そうに、その場を去っていく。
えっ……。
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