第3話オニババ・トーク・ドアホ
紫色の着物を着た少女は水を飲むと少し落ち着いたようだった。
物珍しそうに手渡したペットボトルや廻りの風景を観察している。
無償に気になって声をかけてしまったが何かのコスプレイベントの参加者だろうか?
着物に、二本角やとがった付け爪。まるでアニメーションキャラクターである。
心なしか歯もギザ歯のようで野性味が強く思える。
その姿はまさに鬼っ子少女だった
確かソシャゲ
「おちついた?」
と少女に聞くと
コクリ
と彼女は頷いた
「あ...あう...。」
どうやらうまく喋れないらしい。
さきほどまで激しくエズいてたし調子がわるいのだろうか?
まさかの外国人か?
言葉の意味は伝わっているようだが思ったように言葉が出ないようだった。
さて、どうしたもんかなぁ
警察を呼んだ方がよいのかも知れない。
と思っていたところ
ぐううぅぅうぅ
と彼女のお腹が大きく鳴り、
どこかしら恥ずかしそうにしているように見える。
「もしかしてお腹すいてる?」
と少女に聞くと
コクコクと二回頷いた。
「とりあえず飯にしようか」
とりあえず俺はAを見捨て鬼っ子少女を連れて食事に行くことにした。
警察への対応などは食事の後でゆっくりと考えればよい
とりあえずは腹ごしらえだ。
すまんA...。H先輩の相手は任せた
選ぶなら血なまぐさい飲み会よりも鬼っ子コスプレ少女との夕食であろう
きっとTさんも人助けとなれば飲み会に参加できなくてもきっと許してくれるだろう。
Tさんへのお土産は中止にして、喫茶店のパンケーキをご馳走することにしよう。
俺は早速コスプレ鬼っ子少女を連れて食事に行くことにした。
__________
ペットボトルとかいう奇怪な容器に入った水を飲んだおかげか
不思議と早まっていた鼓動は落ち着きを見せた。
始めは妖術かとも思ったがこの世界はどこまでも現実でしかなかった。
さきほど襲われた吐き気も落ち着いたように思え、
おかげで不鮮明だった自身の記憶も取り戻しつつあった。
目の前のお人よしの男はどうやらワシのような人殺しの化け物を心配しているらしい。
見た目はただの女子なので仕方がないが、もしかしたら物取りなのかもしれない。
どうやらワシは金目のものは何も持っていなかったし
大事にして懐に入れていた仕事道具の包丁さえもどこにも見当たらなかった。
あの糞坊主を追いかけている際は確かに右手に一本もち、懐に一本忍ばせていたはずだが
雷に打たれたあの瞬間に落としてしまったのだろうか?
人を簡単にバラバラに出来たあの名包丁をなくしてしまうとは惜しい事をした。
いつぞやに仕留めた旅人が大事にしていた名包丁だが
なにやら宮使いをしていた料理人だったらしい
渡来の包丁だったのかもしれないが今となっては確認のしようもない
それに顔を覚えていなかっただけで、包丁を調達した相手は
もしやかつての同僚だったのかもしれないが
それすらも目の前に広がる現実に比べれば、どうでもよいことか。
しかしこの男はどうにも奇妙だった。
健康的と言えるほど程よい肉付きではあるが
ワシが襲った旅人たちはもっと骨のある屈強な男たちであった
こんな貴重そうな透明で柔らかい容器に入った水を簡単に飲ませてくれるなど
それなりに金持ちであるに違いないのだが、その割には気品という物が感じられない。
まあ多少は金子を持っていそうだし
見慣れない金子であったがワシが使っていた金子と大差ないだろう。
油断を見せたところで縊り殺し、金品を奪ってやろうか。
ぐぅ
そんな事を思っていたら腹の虫がなってしまった。
Sというお人よしはどうやら食事をご馳走してくれるらしい。
どうにも腹の虫がなっていけない。
鬼に身を落としていこう無かった立ち眩みすら感じる始末だった。
何か腹に入れなければ。
ワシはSの誘いに乗る事にした。
女子になってしまった今でさえSが何か仕掛けてきても
ワシは腹を満たした万全の状態であれば
Sくらいのへっぽこくらいであれば素手でも倒せる自身があったからだ。
ワシのような鬼には人の肉が一番良いが、とりあえずの食事で腹を満たしてからでも遅くはないだろう。
しかしこのSという男は初めてあった得体の知れない化け物に食事をご馳走しようなど
阿呆なのではなかろうか
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