NO.15 注目の的

「あら、あなたは


私を知らないの?」


「?」


その言葉を不思議に思った。


(この人のことを知っていることは


当然のことなの?)


「はい。知らない、ですよ?」


「そう……」


その言葉は


決して失望したように言ったわけではなく、


小さく呟いたようなものだった。


「この人……


『神坂さん』のことを知らないのかしら」


「そうみたいね」


「そんな人がいるなんて……」


「驚いたわ」


後ろの二人の話し声を聞き、


その内容にまた不思議に思っていると。


「私の名字は


『神坂』っていうのだけれど、知らない?」


「はい」


「そう、なのね」


『神坂』という名の女子生徒は不思議そうな顔をした。


「まあ、いいわ」


「それで、私に何か用ですか?」


「なんで魔法師なんかが魔術の高校にいるのかしら?


それが不思議でね」


(またそれか)


(昨日の生意気な教師と


同じことを言ってる)


「別に、魔法師が魔術を学ぼうが


構わないでしょう?


それと、魔法と魔術は違うんですよ」


そこで授業開始5分前のチャイムが流れた。


「……そう。


私以外にも魔法師がここにいることを


よく思わない人はたくさんいるわ」


彼女は体を横に向けて


「―気をつけることね」


一言述べたあと、


その場から立ち去っていった。

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