第7話 味方はいないだろう。



     〇



 最近になって気が付いたのは、夜目が利くことだ。

 昼間と同じくらいに景色が見えることに、気が付いた。

 気が付いた、というのは、かつての俺……どんな生命体だったかはわからないが、その時に比べれば、間違いなく便利な目を持っていると理解できる。

 これのお陰で日夜を問わず、修練に打ち込めるからだ。

 血肉を、骨を、技を、磨き続けられる。

 何より不眠の修練も行えるのが有難い。

 いずれ来るであろう昼夜を問わず襲われる環境のために、少しでも慣らさなければならない。

 俺はゴブリンであって、ゴブリンから離れた、魔物。

 そして、魔物であるがゆえに、その他の種族からも疎まれる。


 味方はいないだろう。


 ならば、いつでも、そのような状況に陥ってもいいように。

 己を磨き続けるだけだ。

 今日は鹿を狩ることができた。

 だいぶ筋肉もついてきたようで、一撃で脳天を破壊することができた。

 解体する技術もウサギ、鹿と慣れてきたおかげで手早く済ませられる。

 一層厳しくなりそうな寒さの前に、毛皮を大量に手に入れられた。

 これで、季節を越えることができる。


 女の遺体を見つけた。


 もちろん、人のだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る