第5話 俺は、強くならねばならないと。



     〇



 あれから二つほど季節が過ぎた。

 雪が積もり、寒さと共に狩りが厳しくなりつつある。

 だからこそ修練の練度が上がる。

 この厳しさに順応じゅんのうし、環境的強さを得ていく必要がある。

 季節と共に生き抜く力を得ていく。

 常に豊穣ほうじょうなわけではない……飢えをしのぎやすい体につくり変えることができたのは僥倖ぎょうこうだ。

 木の実と水さえあれば、生きていくのには問題なくなった。

 ただ修練をするための体力をつちかうのには、やはりそれなりの量の肉もいる。

 耐えられるのと生きていくのとでは、全く異なる。

 うずくまり、季節が過ぎることをただ待つだけでは力にはならない。

 狩りをし、時に戦い、命を頂くことこそ、生きること。

 投擲とうてきの技術は得られた。

 今度はこれを元に、狩りから、戦いへと切り替えていく。

 生き延びるための戦いへと。


 いずれ、ほかのゴブリンが俺に気が付くだろう。

 そして思うだろう、俺を利用しようと。

 数の暴力は恐ろしい。

 どんな精鋭でも、何十倍の物量で襲われれば、対処に手こずるだろう。

 もっと言えば命を落としかねない。

 俺はまだ精鋭とは呼べない存在だ。

 十何倍のゴブリンに襲われれば、確実に命を落とす。

 それだけは避けねばなるまい。


 確固たる、意志が、改めてできた。


 俺は、強くならねばならないと。

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