第4話 焦る必要はない。



     〇



 望むように的に当たるようになった。

 ここから獲物を狩るほうに切り替えていく。

 まずは手ごろな野ウサギや、小型の魔物だ。

 思考する相手の動きをいかに読めるかを重点としていこう。

 これと並行し、追跡ついせきする能力と体力、できれば筋力も鍛えていく。

 ゴブリンは総じて小柄こがらだ。

 人間の大人に勝てる力こそあれど、所詮しょせんは弱者の部類。

 それ以上の力や、理不尽にも近い魔法の力に対抗する術など何もない。

 だからこそ覚えられる術、技、そして身体を手に入れなければいけない。

 理想は、常に全力を保てるほどの体力と筋力だ。


 想像以上に生きている相手をしとめるのは難しかった。

 それでも、的当ての成果は出ているだろう。

 仮に怠っていたならば、俺は獲物を一匹も狩れずに季節を越すこともできなかったとしか思えないほど、現実は厳しかった。

 まだ始めたばかりだ。


 焦る必要はない。


 じっくりと鍛えて、己を練り上げるだけだ。

 仕留めた獲物の皮や骨、丈夫な木々で装備を作った。

 これらの重さにも慣れていかなければ。

 不思議と楽しくなってきている自分がいる。


 これが俺の性根しょうねなのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る