第3話 パンデミック
▼2020年3月12日、WHO(世界保健機関)が〈新型コロナウィルス感染症〉のパンデミック宣言を出した。
2009年の〈新型インフルエンザ〉以来11年ぶりだ。
このパンデミックという表現は「世界中で感染症が流行している状態」と、あまり科学的にも思えないが…。
▼まず最初に起こるのが〈アウトブレイク〉で、例えば新型コロナウイルスが武漢(地理的に狭い範囲内)で急増したような状態。
それが武漢から中国全土に広がったような場合を〈エピデミック〉という。
さらに国境を越えて広がり、世界中で大勢の人々に影響を及ぼすようになったら〈パンデミック〉になるらしい。
▼ちなみに〈新型コロナウィルス感染症〉より致死率の高いSARSやMERSの際には、パンデミック宣言に至らなかった。
「ホラー映画のように、感染したら即死亡という怖い病気だと、僕たちウイルスは子孫を増やす間もなく自滅してしまうからね」と〈新コロ〉は講釈を垂れる。
「それを考えると〈新コロ〉は賢いな。人間に感染しても二割しか発症しないから、元気な八割の人間は無意識のうちに〈新コロ〉をばらまいてしまうという…卑怯だよ」
「医師脳先生、それは誤解、濡れ衣です。武漢のアウトブレイクからエピデミックになるまで、人類にはパンデミックを抑えるチャンスがあったのをお忘れですか?」と弁解する。
▼2019年12月30日、武漢市の李文亮医師は「市場で7人の重症肺炎の感染が確認された」などの情報をネットで発信した。
原因不明の肺炎の発生に警鐘を鳴らしたつもりが逆に訓戒処分を受け、後に自らも感染して2020年2月7日に34歳で亡くなった。
死亡したこの医師に対し、中国政府の調査チームが「処分は不当だった」と結論を出したのは3月19日だ。
国民の健康よりも国家の威信を優先させたのか、なんとも痛ましく忌まわしい出来事であった。
▼命がけの警鐘にもかかわらず始まった中国の春節。
…今年は1月24日から1月30日までの7日間が春節連休で、約30億人が移動する〈春運〉は格好のウイルス拡散の機会となった。
「中国のことばかり責められないんじゃない」と、またしても〈新コロ〉が口をはさむ。
▼確かに、春節の中国人観光客を(インバウンドツーリズムで)当てにした日本はあまりに無防備だった。
さらに2月3日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の入港。
…感染者712人、死者13人が発生する惨事となった。
そんな状況で、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まったのが3月24日。
これでは確かに他国を笑っていられない。
▼孫子は「善く戦う者は人を致して人に致されず」と説く。
有利に戦いを進めるポイントは主導権を握りることであり、主導権を握れば(作戦選択の幅が広がるので)余裕を持って戦える。
成り行きで後手へ後手へと回るのは、もうやめにしよう。
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