2度目の人生は慎ましく生きられたら

闇野ゆかい

第1話プロローグ 産み落とされた世界のありさま

彼が赤子として産み落とされる世界、彼から見て異世界は——荒れていた。


その有り様を創り出したのは、四人の男女だった。

世界の勢力図は、彼ら彼女らの手により均衡バランスは保たれ、時として崩される。

世界の支配者として君臨する彼ら彼女らは、月明かりが差し込まない一本の蝋燭の灯りを頼りに湿った暗がりの一室にて密談を交わしていた。

「そろそろあいつら、衝突ぶつけない?ヴィアドッゾ王国から泣きつかれちゃってさぁー……やんない?」

「貴女様に泣きつくとは……堕ちましたね、ヴィアドッゾ王国も。まあ、無理もありません。今はそのときではありません。あちらがどう出るか……予測出来ない以上——」

円卓に両足を投げ出し、愉快な笑みを浮かべ提案する少女に、対面の席に腰を下ろす銀縁眼鏡を掛けた青年が憐れみの声を漏らしてから、提案に賛同しなかった。

「素直に言ってみりゃあこうだ。詰んでんじゃねぇか、ったくよぉ〜ぉっ……」

不満たっぷりに愚痴を漏らし、無言を貫く男性に視線を移す少女。

小娘ガキに泣きつくなんざ……堕ちやがって、ケッ……」

「その少女ガキにすら逆らえねぇケンカバカはどこのどいつだ〜あぁ!あァんんッ!」

「ジジイのおかげでふんぞりかえれる小娘ガキのくせに……」

「おじいさまは、妾を選んでくださいましたの。ケンカバカは、シェルダントは敗者ですわ。うふふふっうふふっ」

「チッ……いけすかねぇ小娘ガキが。いつか殺すゥ……」

シェルダントと呼ばれた深緑の髪を逆立てた少年が少女に睨みながら舌打ちして、宣戦布告を吐いた。


「クフフっ喧嘩はそのへんに……シェルダントは喰いつく相手を選ばないと、いつか死にますよ。貴女様も貴女様です、諍いを仲裁するワタクシの身——」

「……チッ」

「おうおうわーったって」


——世界の支配者達の密談はまだまだ続くようだ。







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2度目の人生は慎ましく生きられたら 闇野ゆかい @kouyann

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