第19話
迎えた週末、モカに乞われて自身の定宿に彼女を連れ込もうとしたら、何故かニナまで付いて来た。
事前に話を通してあったアリサは、気を利かせて、1人でダンジョンに潜りに行ってくれた。
フロントを通る際、宿代の3倍に当たる金貨1枚を追加で支払うと、少ししてから人数分のバスタオルとバスローブ、それから軽食を運んでくれたので、その後約6時間、ひたすら彼女達の相手をした。
アリサの事があったから、初めての彼女達に無理をさせず、優しく相手をしたのが仇になり、2人して何度も交互に求めてきたので、面倒になって意識を飛ばすまで攻めたら、今度は2人がかりで向かってきた。
大人しそうな顔をして、ベッドの上ではお互いの痴態を見ながら更に欲情を深める彼女達に、俺は少し呆れてしまった。
3人で湯に浸かり、色欲を含めた様々なものを洗い流した後で、部屋の窓を開け放ちながら、用意して貰った軽食を取る。
「アークさん、あちらの方も凄過ぎます。
知り合いの女子達の話だと、大抵は多くても2、3回みたいですよ?」
「途中からは、私達だけが行かされてましたものね。
ここまで逞しいと、女冥利に尽きます」
「俺は精神的に疲れた。
約束通り、月に1回は相手をしてやるが、それで勘弁してくれ」
「その代わり、今日みたいに半日くらいかわいがってくださいね」
「その場の勢いでニナまで抱いてしまったが、本当にそれで良かったのか?
パーティーの手伝いさえすれば、治療費のことは問題なかったんだぞ?」
「私は最初からそうして欲しかったんですよ。
何度も誘いをかけてたのに、全然気付いてくれないから・・」
「・・明後日からまたがんがんダンジョンに潜るぞ。
早く強くなって、2人でカレンを支えてやってくれ」
「はい」
「頑張ります」
深夜、宿の窓から部屋を抜け出した俺は、王都を見下ろせる教会の塔のてっぺんに座り、ぼーっと景色を眺めていた。
時折吹いてくる風によって自己を再認識しつつ、明かりの消えた家々に、
「こんな所で何してるの?」
ベッドに俺が寝ていないことに気付いたらしいアリサが、狭い屋根で身を寄せるように隣に座ってくる。
「少し頭を整理してたんだ」
「どの娘を私達の仲間にしようか考えてたの?」
「違うよ。
俺は今の所、アリサ以外を眷族にするつもりはない」
「昼間はお盛んだったみたいなのに?
2人同時に相手にしてたんでしょ?」
「あれは俺から求めた訳じゃない。
彼女らの希望に応えてやっただけだ」
「そんな事言ってると、その内女性に刺されるわよ?
あなたには無意味だけどね」
「仲良くなって、同じパーティーで戦う女子が求めてくるなら、応えてやった方が良いだろ?
別に強制している訳じゃない。
命懸けで戦闘してれば、そりゃあ性欲も溜まるさ」
「人間は魔族とは違うのよ?
皆がそうという訳ではないわ。
死と隣り合わせに暮らしている人や、孤独な人ほど、他の誰かとの特別な繋がりを求めるものなの。
人はそれを、『心の支え』と呼ぶのよ」
「魔族だって、別に性欲だけで相手を抱いてる訳じゃない。
自分のパートナーは、たとえ何人いても大事にするのが普通だ。
母だけは例外だったがな」
「多くの女性にとって、自分の初めてを捧げる相手は特別よ?
たった1度しかない機会だし、頭の良い
快楽だけを求めてくる相手は後腐れ無くて楽だけど、そうではない娘を相手にするなら、心してかかった方が身のためよ?」
「・・覚えておくよ」
「でもそれじゃあ、一体何を考えてたの?」
「この国への借りの返し方さ」
王城のある方向を眺めながら、ゆっくりと話し始める。
「戦争を止めるためとはいえ、結構な金額を頂いたからな。
その半分くらいは、何か別な形で返してやろうと思ってたんだ。
学院に肩入れするのは、俺があの場所が好きだという理由もあるが、この国の戦力があまりにも貧相だから、未来の戦力となる学生達を鍛えてやろうという意味もある。
カレンは確かに面白い奴で、容姿も俺好みの良い女だが、それだけではあそこまでしてやらない。
学院で俺を認めてくれた最初の生徒だし、性格も良い奴だから、困っていれば助けるし、勿論その命はできる限り護ってやりたいが、毎日毎日自分にとっては意味のない戦闘に付き合うほどではない。
学院当初にこっ酷く振られ続けて、この世界の常識とやらを本で学ばなかったら、身体を差し出してこない限り、恐らく適当に相手していただろう」
「あなたが振られ続けたことは、私にとっては非常に幸運だったわね」
聴いているアリサがフフフと笑う。
「初めの内は、彼女と2人で潜っていれば、その成長に感化された者達が、黙っていても後に続くと思ってたんだ。
だがそれは間違いだった。
何処までもぬるま湯に浸かっていた奴らは、自分達の事を棚に上げて人を非難する始末。
さすがに再教育を施してやったが、それで活性化したのはまだ半分にも満たないだろう。
俺はいつまでもあの学院にいるつもりはない。
早ければ来年には別の場所に行く。
それまでにカレンだけでも鍛え上げておこうとしたが、よく考えてみれば、それでは俺がいなくなった後、彼女がパーティーを組む相手がいなくなる。
だからニナやモカまで受け入れて、彼女に仲間を増やしているのだが、どうも俺が思うようには進んでいないみたいだな」
「若い男女が長い時間を共に過ごせば、色々あるのは歴史の必然。
私はそれも嫌で、あなたに出会うまではずっと1人でいたから。
・・いっその事、男性もパーティーに入れてあげれば?
それでバランスが取れるかもしれないわよ?」
「嫌だね。
何で俺が目の前で
わざわざ鍛えてやってるのにそんな事されたら殺意を覚える」
「そういう男性ばかりじゃないかもよ?
中には真面目に訓練する子もいるんじゃない?」
「かわいい娘に囲まれて、脇目も振らずに戦う奴なんて、俺は同性愛者しかいないと思う。
それはそれで嫌だ。
パーティーに入れる娘がかわいくないと、俺の精神疲労が増すからそれも嫌だしな」
「我儘なんだから」
「まあ、パーティーの事に関しては、暫く現状維持で様子を見る。
だが国への借りは、一体何で返せば良いかなと・・」
「良い案があるわ」
「どんな?」
「国にある沢山のダンジョンに潜って、魔物を間引くのよ。
本来、ダンジョンの管理はそれが領内にある領主達の仕事だけど、経済的な理由から、それが上手くできていない場所も多いの。
ここ数年で、スタンピードを起こしたダンジョンも幾つかあるわ。
だからそれを国に代わってしてあげるのよ」
「・・確かに良い案だ。
うちのパーティーメンバーを連れて行けば、レベル上げにもなるな。
だが、そうすると週末のアリサとの時間が取れなくなる」
「私との時間はそれこそ無限にあるのだもの。
1年くらいどうって事ないわ」
「寂しくないか?」
「大丈夫。
暇な時にちゃんと穴埋めして貰うから」
「穴埋め・・」
「あのね、そういう下品なジョークはこういう時に言わないでね。
私でなければ幻滅されるか殴られるわよ。
あなた、顔は良いんだから、余計に違和感があるの」
「顔は・・」
「そう、顔は。
私が
・・もし他にも誇れるものがあるというなら、それを証明してみてくれる?
お勧めはベッドの中よ?」
相変わらず、とても奇麗な笑顔を見せる。
「良いだろう。
とことん相手をしてやる」
「もうあまり時間がないけど、勿論朝までね。
他に使うだけの精力があるのだから、ちゃんと頑張ってよね」
やっぱり多少は怒ってたのな。
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