第7話:もしかして
砂の中の移動にも少しずつ慣れてきた。「四本足」を見かけたら食べる。「二本足」なら逃げる。という仲間内で決まったルールに従いながら、”ホース”は皆の元へと急いでいる。しかし、時間が経つうちに「二本足」と遭遇する頻度がどんどん高くなっているような気がする。見つかると血相を変えて追いかけてくるので、落ち着いて「四本足」を探すこともままならない。ここ暫くは何も口に出来ていない。
一方の"ちくわ"と"ストロー"は、何やらうまい作戦を考え出したらしい。"ホース"にも覚えがあるが、この星の奴らは嗅覚が異常に優れているらしく、風上に立つとすぐに気付かれてしまう。その習性を逆手に取って、"ストロー"が囮になって相手を引きつけ、"ちくわ"がその背後からこっそり転がりながら下半身だけを轢き潰してしまう。すると奴らは悶絶して動かなくなるので、その後ゆっくりと味わうことができるそうだ。「二本足」にも「四本足」にも有効なようで、あの二人が思い付いたとは信じられないほどよく出来た戦法だが、単独で行動中の"ホース"がいくら真似したいと思っても、"マカロニ"が死んでしまったからと言って、"土管"にペアを組んで欲しいとお願いするなんて到底無理な話であった。
そう、5人目の仲間の名前は"土管"。"ちくわ"や"ホース"よりも遥かに大きな7m超の体格を誇っており、知能も比べ物にならないほど高い。今もすでに恒星船の近くで我々の到着を待ってくれている。ルールなんて無視して自分も腹いっぱい「二本足」を食べてみたいなどという幼稚な願望は捨て去り、一刻も早く"土管"のいる場所へ急ごう。健啖家の二人組も、間もなく集合地点に辿り着くようだ。
それから2日。最小限の息継ぎで仲間と交信しながら自分の位置を確認し、「二本足」の少ない夜間は砂上を転がり、昼間は砂中に逃げ隠れて、何とか集合場所まで辿り着いたものの、"ホース"の空腹は既に限界に達していた。相手の足の数など見てもいなかった。本能が求める新鮮なタンパク質を目掛けて砂中から勢いよく飛び出した"ホース"は、「方舟」を警護する戦闘歩兵の一人、ノアに齧り付き、
この、人類と地球外知的生命体による命懸けの喧嘩は、「方舟」の上空を無許可で飛行する民間ドローンの搭載するカメラによってしっかりと捉えられていた。敵が砂中に逃げ戻った後も、隊形を乱された兵士たちが半狂乱で足元に集中砲火を浴びせる様子が大空からライブ配信され、瞬く間に再生数を稼いでいったが、それを観ていた視聴者の一人がふとした疑問をコメント欄に残した。
「なんか、めっちゃ太い足跡映ってない?」
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