第5話:もうやめた
結局、"マカロニ"は遥か遠くの見知らぬ惑星に到着してから一度も食事にありつけずに、その生涯を終えた。真面目で、決められたことはきちんと守る性格の彼は、みんなと同じように、できるだけ砂の中を進みながら合流地点を目指していた。食べ物を探したり、声を掛け合って仲間の位置を把握したりするための「息継ぎ」は最小限に抑えながら、一刻も早くみんなと落ち合えるように先を急いでいたが、何回目かの息継ぎで砂中から顔を出したとき、大小一組の生物に出くわした。
小さい方は四本、大きい方は二本の足を前後に動かしながら、"マカロニ"に背中を見せて歩いていた。二匹のすぐ後ろにぴったりと張り付きながら齧り付く機会を伺っていた彼は、「二本足」の生物が奇妙な道具を手にしているのに気付いた。
"ちくわ"からの報告内容を思い出した彼は、悟られないよう細心の注意を払ってその特徴を仔細に観察して仲間に報告していたが、彼が全てを伝え終わる前に、「二本足」が顔をしかめながら"マカロニ"の方を振り返った。彼からのレポートがそこで突然途切れてしまったことで、仲間たちは相手の持つ武器の殺傷能力がいかに高いかを理解した。
それにしても、移住先で捕食対象から反撃を受ける、ましてやそれによって命を落とすなどということは、恐らく今までに一度として例がない。過去から連綿と続いてきた、一つの星を食い尽くしては別の星へ移り住むというこの因習は、絶対的な安全性の確保を前提として成り立っている。
移住可能な惑星を探査する役割を担うのは、彼らの種族の中でも特別に知力と体力に優れた者たちで、幾多の労苦を経て適合する惑星を発見した暁には、新世界の統治者として相応の権限と責任を与えられて、その星への移住を希望する者たちと共に赴任する。自然、そこに厄介な先住民がいないことは絶対条件となるため、その星の生態系や食物連鎖体系は徹底的に調べ上げられていた。
この地球も、"ちくわ"や"マカロニ"たちを率いてやってきた彼らのボスが既に検分を済ませていた。名前は後で述べるが、このボスもその能力を認められて移住可能な惑星の探査を任されていたし、その手順にも抜かりはなかったはずだ。こんな、自分たちの生命を脅かすような種が
戻ろう。移住には多少のリスクがつきものだが、この星は許容範囲を大きく超えている。ボスはその巨躯を砂の中に潜らせて、少しだけ周囲を視察したあと、自分たちを運んできた恒星船の場所までたどり着き、頭をわずかに砂から出したのだが、目の前の光景に息を呑んだ。"マカロニ"の報告にあった「二本足」が武器を手にして大量に並び立ち、彼らの船を取り囲んで監視の目を光らせている。ボスは、方向音痴揃いの仲間たちに集合場所といくつかの注意事項を伝えようと、彼らの頭でも理解できるよう、平易かつ端的な言葉を選んでメッセージを送り続けた。
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