第59話 「告白して結ばれればどれだけ幸せか」

 俺たちも後を追うようにショッピングモール内に入る。入って………。


 ………………。

 ……………………。

 ………………………。


「さあ、気を取り直して2人を追おうか」

「何故俺たちまで変装した……」


 ショッピングモール内に入り、そのまま結斗たちの後を追うと思いきや……まひろに連れられ立ち寄ったのは、雑貨屋。


『むこうが変装してるなら、私たちも変装しないとね』


 などと、謎の理論を言われ変装させられた。


 まひろは丸メガネを購入。度は入っておらず、飾りみたいなメガネであるが、まひろが付けるとオシャレ度が増す。


 一方俺はというと、まひろに髪をかき上げろと指示されて、オールバック風に。加えてサングラス着用……。


「どう見ても怖い人だな」

「怖い人だね」


 顔面怖いやつがオールバック&サングラスしたらもう見た目最強なのよ。つか、逆に目立つ気が……。


「てか、どうやって結斗たち探すんだ?」


 雑貨屋に立ち寄っている間に結斗たちを完全に見失った。この広いショッピングモール内で特定の人物を見つけるのは厳しい……。

 

 これはもう、仕方ないよな!!


「まひろさん。もう諦めるしか——」

「大丈夫」

「え?」

「結斗のスマホにGPSを付けているから」

「ええ……全然大丈夫じゃねーだろ」


 それは果たして許可を取ったのだろうか。ちょっとドヤ顔でスマホを見せられても困るのだが……。


「さあ行こうか」

「ええ……」






「どうやらここみたいだね」

「またオシャレなカフェだなぁ」


 普段の俺なら立ち寄らない、カップルや女子が使うようなタイプ。

 GPSいわく、結斗たちはここにいるらしい。

 

 しばらくして、女性店員さんが近づいてきた。


「いらっしゃいませ」

「2名で頼みます」

「はい、2名様ですね。その、当店はカップル割もありまして事前に……」

「「あっ、違います」」


 まひろと声がハモる。

 店員さんは若干戸惑っていたが、違うことは否定しないといけないからな、うん。


 店内へと案内される。お客さんは結構いる。

 照明は少し明るい程度の落ち着いた感じ。席はファミレスのように板の仕切りがあるタイプ。立てば全体を見渡せるが、それだと不審に思われてしまう。


 結斗たちの席は……おお、左側の隅っこ。レジ付近に案内された俺たちからはかなり距離がある。


 つまり……


「ふむ。これじゃあ結斗たちの会話を聞くどころか、監視すら難しいね」

「そうだな。じゃあ諦め……」

「店を出る時にはここを通るだろう」

「ええ………」


 まひろは諦める様子はなし。居座ること前提であるとばかりにメニューを開いた。

 ………俺もこのまま付き合わされるんだろうなぁ。


「笠島くん、お腹は空いてないかい? 付き合わせてるんだし、ここでの飲食代は私が持つよ」

「いや、いいよ……」

「遠慮することはない」

「いや……」


 女の子に奢らせるなんて、男として罪悪感があるのだが……。しかも俺、一応お金だし……。


「俺が奢るよ」

「え?」


 つい、口走ってしまう。

 大丈夫。2人分の飲食代くらいお小遣いで賄える……。


「ふふっ。話が紛らわしくなってしまったね。やはり、自分で飲食した分は自分で払おう」

「そ、そうだな……」


 ここで話が一旦途切れる。

 

 まひろはりいなと同様、話しかけられたら話すだけで、特段、仲が良いわけでもないから……話が続かん。


 それから注文したアイスコーヒー2つが届く。

 アイスコーヒーは……うまい。うまい……。


「まひろさんってさ」

「うん?」

「結斗のことが好きなんだよな」

「随分と直球だね。まあ否定はしないよ。私は結斗のことが好きだ」

  

 顔色一つ変えずハッキリ言った。

 そりゃ好きじゃなきゃここまでこないよな。


「……告白はしないのか?」


 次にそう言うと、まひろはゆっくりとアイスコーヒーのコップを置き、


「告白して結ばれればどれだけ幸せか」

「え?」


 まひろの眉が一瞬下がったような気がした。


「人を好きになるのは自由だが、結ばれるのはお互いがお互いを好きになった時だけ。私が好きでも、結斗にとっては友達以上の好きではなかった場合、告白したって断られるだけだ」

「ま、まあそりゃ……」


 告白して結ばれるって言ったら、両想いであることが真っ先に浮かぶ。

 結斗の性格上、ましてやストーリー上ではお試しで付き合うなんてことはないだろう。


「それに相手は結斗だ。笠島くんなら意味が分かるだろう?」

「ま、まあなぁ……」


 結斗は鈍感ですから。


「もう少し時間が必要かなと思って、告白しないだけだよ」

「まひろさんでもそうやって悩むんだな」

「それはそうだよ。私だって1人の女の子なのだから。……まあ待っていられない事態もくるかもしれないけど」


 最後に意味深な言葉……怖いのよ。


「笠島くんにもいつか好きな人ができると思うけど、その時に私の気持ちも分かるさ」

「好きな人ねぇ………」


 好きな人……俺にはまだ程遠いいものだと思うなぁ。





「………」

「どうかしましたか?」

「いえ。なんでもありません」


結斗の向かい側に座る女性は意味深にスマホを見ていたが……閉じて鞄の中に直す。


「もう変装を解いても大丈夫でしょう」

「あっ、そうですね。カフェにも入りましたし」

 

 結斗も女性も変装を解く。


「飲みものでも注文しますか?」

「そうですね。届いた後、本題をよろしいでしょうか?」

「も、もちろんですよ——……!」

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