第44話 悪役と小悪魔ヒロイン
りいなが俺に話……。話……?
「もしかして雲雀のことか?」
平静を装って結斗を見送ったものの、実はすげぇ嫉妬していて、雲雀の情報を聞き出そう……とか?
いや、それだったら、そもそも結斗を引き留めるか、一緒に行くはず……。
「雲雀? ああ、あの美人メイドさんのこと」
「りいなさんから見ても、雲雀は美人認定なのか」
「私から見てってなによ。あの人は誰がどう見ても美人でしょ。髪もサラサラ。肌もすべすべ。爪も綺麗だったし。それぞれの手入れを毎日しっかりやっているのが一目で分かる。そういう丁寧さは女性としても見習いたい」
「大絶賛だな」
「笠島はメイドさんと一緒に暮らしているのよね」
「そうだな」
実質2人暮らしである。
美人メイドと家では毎日2人っきりである。
「もしかしてスキンケアとかメイドさんに習ってる?」
「雲雀が使っている化粧水やクリームを俺も使わせてもらってる。塗り方とかは習ったけど」
「笠島も肌、見た目の割にはやけに綺麗だと思ったらそういうこと。目つきと悪さと目の下のクマはダメだけど」
「ダメってなんだ!」
でも、スキンケアのお陰で肌に関しては、ニキビが出たり、肌荒れはない。
ゲームのキャラは、ニキビとか肌荒れがなく綺麗な顔だが、現在アレをキープ中である。
「ちなみ雲雀は料理も得意だ。味は店で出せるレベル」
「私のより?」
「……俺、りいなさんの手料理食べたことないけど」
「林間学校のカレー」
「あれは共同作業じゃね? 美味かったけど」
「ありがとう」
「みんなで作って食べたからより美味しかったと思うけど。それで、話題が逸れまくっているが、りいなさんの話とはなんだ?」
「あっ、そうだった」
りいなも忘れかけていたのかい……。ということは、結斗に関しての話ではないとみた。
「林間学校のことでね」
「林間学校……りいなさんが言うなら田嶋の彼女の件か。あれからは、なにもないか?」
「彼女は私に何もしてこないよ。それどころか、学園では大人しいし……よほど懲りたみたい。元の原因はあの男にあるけど」
「まあな」
りいなに問い詰めるほど、彼女は田嶋のことが好きだったと察する。
そんな好きな彼氏から、別に好きな人ができたから別れようなんて言われたら……怒ってしまうのも理解できる。危害を加えるのはダメだが。
別れるかは本人の自由だが、田嶋は彼女の
「それで、その……お礼がしたい」
「ん? お礼? 俺、お礼されるほど何か偉大なことしたか?」
「プレゼント代金が紛失したこと。下手したら私にも疑いがかけられていて……クラスにそれが広まったら、最悪犯人にされていたかも。未然に防いでくれてありがとう。そして、彼女にハッキリ言ってくれてありがとう」
ありがとう、と言葉で言ってくれるのは嬉しい。
しかし、お礼をされるのは……
「りいなさんも分かっていると思うけど、アレは俺が勝手にやったことだし、お礼をされるほど、俺はいい事をしたとは思えない」
女子を部屋に閉じ込め、怒鳴る……やってることは、褒められるどころか、批判されること間違いなしの、見た目通りの行動。
そんなのに対して、お礼など受け取れるはずがない。
俺がそう返すか分かっていたのか、りいなは、
「ふーん」
「なんだよ……」
ジト目で見てきた。
「こんなに可愛い子がお礼したいって言っているのに、受け取らないんだぁ〜」
「だからなぁ……」
「笠島がどう思っていても、私はお礼するに値することをされたと思っているの。だから素直に受け取るべき」
「いや……なぁ……」
「それとも、私と2人っきりは緊張しちゃうとかぁ〜? 安心しなよ。笠島は恋愛対象として見てないから」
「そんなの俺が一番分かってるわ!」
結斗ラブだもんな!!
りいなはわざとなのか、俺を煽るような口調、小悪魔スタイルになる。俺がお礼を断るたびに多分、こうなのだろう。
「……分かったよ。じゃあありがたく、お礼とやらを受け取ります」
「そうこなくっちゃ。じゃあ、はい」
「え?」
りいなが何やら手を差し出した。
「なるほど。事前にお礼代を俺から徴収するのか。待ってろ。財布なら部屋に……」
「違うし! お礼する側から取るわけないでしょ!」
「冗談だ。で、なんだ?」
「連絡先」
「連絡先……? 誰の?」
「笠島のに決まってるじゃん。日程とか内容はこっちから送るから」
「なるほど」
それなら交換するか。
QRコードを読み込むと、りいなの連絡先のアイコンが表示された。
「交換されたね。これで良し。じゃあまた連絡するから」
「ああ」
「言っとくけど、お姉ちゃんやゆいくんには内緒だからね」
「了解した」
用件が終わったのか、りいなは脱衣所から出ていった。
1人になった俺は、ふと連絡先一覧を見る。そこには、結斗、まひろ、りいなと……主人公、ヒロインの連絡先が。
「俺、バッドエンド回避……してるよな?」
今更ながら心配になるのだった。
◆
———同時刻
「私とお話ですか?」
雲雀は聞き返す。
表の表情は相変わらずの真顔だが、内心では「なぜ、私と……?」と疑問である。
「はいっ。雲雀さんとです。あっ、お話する前に、僕のことを知ってからの方がいいですよね。僕は雄二くんの友達の佐伯結斗です」
「存じております。雄二様からお話を聞きますから」
「雄二くんからですか!」
「はい。雄二様の初めてのお友達でとても優しくていい方だと」
「本当ですか! 雄二くんが……!」
嬉しそうな顔をする結斗を見守ったあと、雲雀も。
「改めてまして、私は雄二様のメイドの雲雀と申します。主に、雄二様の身の回りのお世話をしています」
「雄二くんの身の回りのお世話……それなら」
「?」
「あっ、えとっ。よ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
雲雀も反射的にそう返すが、疑問が増えるだけであった。
(それにしても、結斗様はとても純粋そうな方ですね。雄二様がその純粋さに、時折対応に困ったりしているのが目に見えます)
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