第18話 「"私の"ゆいくんが惹かれる理由が知りたい」
「りいなちゃん戻ってこないね。迷子かな?」
「んー、どうしようかな」
「ん? このまま待つんじゃないの? あっ、探しに行くとか」
「………」
「まひろちゃん?」
顎に手を当て何やら他のことで悩んでいる様子のまひろ。結斗は首を傾げて不思議そうに見ていた。
「……結斗」
「ん?」
「一回だけ。2人っきりでアトラクションに乗っても構わないかな? りいなにはメールで場所を送っておくから」
「えっ、でもりいなちゃんが迷子になっているのに遊ぶのは……」
「それに、アトラクション前に集合の方が分かりやすくていいだろう? 乗っている間にりいなも来るさ。……私のわがまま、聞いてくれないかな?」
「うーん……そうだね。待っている間に乗るならいいよ」
「〜〜! ありがとう結斗!」
◆
「…………」
「…………」
俺とりいなは、お互い無言で見つめ合っていた。
雲雀とのいい雰囲気をぶち壊して駆け込んだトイレ。スッキリして出たら、今度は警戒していた、美人姉妹のもう一人。妹のりいなと出会ってしまった。
焦げ茶色のツインテールにブルーの瞳。そして男の誰しもが、釘付けになり、鼻をだらしなく伸ばしてしまうほどの巨乳。胸の影響か、サイズが合ってない服を着ており、学校指定のブレザーも萌え袖状態である。
甘えるような口調で小悪魔な彼女だが、その正体は好きな人のためならばなんでもできるヤンデレである。
てか、まただよ! 主人公と美人姉妹の姉。そして妹で3回目!! 俺は大人しくしているはずなのにあっちから来るのはなんでだよ!?
「なんでアンタがここにいるのよ!」
先に口が動いたのは、りいな。指をさされて言われた。
別にいてもいいじゃん、と言おうと思ったが口を紡ぐ。
どう対応すればいいか迷ったのちに、
「人違いデース」
知らない人のフリをした。
「絶対笠島雄二でしょ! ゆいくんから毎日聞かされてるし、そんな怖い顔、他にいないもん!」
結斗からの話と顔面で覚えられていたらしい。
りいなが逃がさないとばかりにこちらに近づいてくる。
「……なぜ近づいてくる。関わろうとする。お互いプライベートで遊園地にきてるんだから無視でいいじゃん」
「アンタに無視されるのだけはなんかムカつく」
「理不尽!? てか、そっちも連れがいるんだろう? 早く戻りなよ」
「あー、大丈夫。お姉ちゃんのことだから私が居なくなって今頃、ゆいくんと2人っきりでアトラクションを楽しんでるはず」
「お前ら仲良いのか悪いのか分からない姉妹だな……」
「恋愛に関しては手加減ないからね、お姉ちゃんは」
君たち姉妹は、結斗が関わると容赦ないからねぇ。あと、今さらっと結斗とまひろと来たって重要な情報にびっくりしたんだけど。
俺が頑張って情報を整理している時、りいながまた話しかけてきて、
「ゆいくんのこと好き?」
「はぁ?」
突拍子のない質問に、とぼけた声が出る。……まあ答えるしかないか。
「友人としては好きだ。それ以上はない」
「はぁ? ゆいくんの友人以外の時はゆいくんのこと好きじゃないの?」
「お前めんどくさいなぁ……」
友人以外の時ってなんだよ……。
「友情以上の好きはないってこと。男にまで嫉妬してるのか?」
「ち、違うし。"私の"ゆいくんが惹かれる理由が知りたいだけ」
「……ほう?」
もちろん友情の好きってことだよな?
「ゆいくんの話を聞いてるだけじゃ分からない。だって笠島雄二、アンタ顔面怖いし」
「人は見た目だけじゃないわ! あと、ずっとフルネーム呼びやめろ。話もひと段落したし、人を待たせてるから俺行くわ」
「もうちょっと話してくれてもいいじゃん!」
「じゃあなー」
りいなが後ろでぎゃあぎゃあ騒いでいるが無視して歩き進める。
と、いきなり静かになった。
「やっと諦め……」
「ねぇ君ひとり? 可愛いね」
「良かったら俺たちと回らない?」
りいなが1人になったところを狙ったかのように、男たちがりいなをナンパし始めた。
だが、俺には関係ない……。
「遊園地は出会いの場ではないんですよ♪ うざいのでさっさと去ってくださいこの……ゴミクズ」
「はあ? 君生意気じゃない?」
「可愛いからって調子乗るなよッ」
おいおい、もうちょいマシな断り方あっただろ!? なんで挑発するような口調なんだよ!!
「きゃっ。男の人の力に私、勝てない〜」
「今さら謝ってももう遅い!!」
「このままトイレに連れ込んでたっぷり楽しんでやるよっ」
「きゃっ……手握らないでっ。痛いっ!」
「………」
ああ、もうーーーーっ!!!
「どけや!」
「あん? なんだよッ。って、ひっ!」
「お、おいこいつヤベェぞ!」
睨みつきながら迫ると、男たちは情けない声をあげて逃げ去った。
りいなを見ると狙い通りといったニコニコ顔をしている。
「……で。わざと俺を引き止めてなんだ?」
「見捨てないで助けてくれるいい人ですね」
「どうも」
「お礼に私ともう少し話せる権利をプレゼントします」
「あほか」
「え?」
しつこいりいなに盛大にため息をつき、言ってやる。
「さっきも言ったが、俺にも連れがいるんだよ。待たせている人が今みたいにナンパに遭っていたらどうするんだ。美人は黙っていてもモテるんだから……はぁ。あと、お前だって早く戻れ。離れ離れになって心配してない人なんていない」
「…………」
「じゃあな。そっちも3人で楽しめよ」
「……はい。ウザく絡んでごめん……」
「お、おう?」
急にりいなが静かになった隙に小走りでその場を離れる。
結斗関連になると、ほんと美人姉妹は積極的だよなぁ……。
『あー、あの人。なんかヤバイことに手を出してるって噂たってるんだっけ? でもほら。私が勘違いされやすい見た目している側だしね。噂なんて信じないよ。信じるのは、実際に目の前で起こった出来事だけ』
りいなは待ち合わせ場所へ歩きながらぼんやり考える。
「私の誘いに乗らないなんて……顔の割には真面目なやつ……。てか、あのウザい感じ。演じるの中々疲れる……はぁ。でも私のキャラだからなぁ……」
家ではずぼらで割と大人しいりいなは疲れたようにため息をつく。
「それにしても……」
『さっきも言ったが、俺にも連れがいるんだよ。待たせている人が今みたいにナンパに遭っていたらどうするんだ。美人は黙っていてもモテるんだから……』
「連れって……女の子なんだ。ふぅーん」
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