第5話 悪役。口から砂糖を吐きそうになる

 入学式が始まった。

 立ったり座ったり、来賓の話を聞いたり……至って普通の入学式。

 

 あとは……新入生挨拶で入試トップだった姉、澄乃まひろが教壇に立って挨拶をしていた。周りの反応は……まあ想像はつくだろう。皆、うっとりした表情で聞き惚れていた。

 

 入学式が終わり、割り当てられた教室に入る。同じクラスにいるのは……。

 

「やぁ結斗。また会ったね」

「ゆいくんと同じクラス〜〜♪」

「僕も2人と一緒で嬉しいよ」


 美人姉妹と主人公。お決まりの3人である。


 席も近く、相変わらず体を寄せ合い3人でイチャイチャ……初対面同士が多いクラスで完全に浮いている。


 ゲーム画面だと主に3人の様子が映し出されて「ハーレムだなー。羨山」と思っていたが、モブ視点から見るとまた変わる。


「結斗。やっぱり髪ちょっと切ったよね? とても似合ってるよ」 

「背も少し伸びたんじゃない? ゆいくんがどんどんカッコ良くなっていくよ〜」

「ほ、褒めすぎだよ2人とも。それに2人の方がちょっと見ない間にまた綺麗になっているし……」

「結斗……」

「ゆいくん……♡」


(((学校でイチャイチャすんなよ!!!)))


 なんで周りのモブがあんなに発狂するか今ではわかるよ。


「あの人怖くない……?」

「顔も怖いが悪い噂しか聞かないらしいぜ……」


 おっと。俺も浮いていたようだ。


 一番後ろの席で少しは目立たないと思っていたが、怖そうな顔面と雰囲気のせいで浮いているらしい。


「俺、アイツには絶対近寄らないわ……」

「話しかけられたら嫌な目に遭うよ……」


「…………」


 てか、見た目で判断しすぎだろ!! まあ気持ちは分からなくないが。ゲームじゃその怖い顔と金を使って自分の都合のいい人を集めていたようだし。


「いいなぁ。まひろ様とあんなに親しげに……」

「俺もあの可愛くて巨乳な子にくっついてもらいてぇぇ!」


 どこにいっても周りの話題になるな、あの3人は。


 しかし、羨ましがられたり嫉妬されたりはするものの、主人公に対して「なんであんな冴えないやつになんで……」や「陰キャの癖に……」などという声は聞こえない。


 これは主人公、佐伯結斗の容姿にある。


 最近のエロゲにあるあるある。

 主人公がカッコいい。一枚絵で主人公の容姿が映ることがあるが、とんでもねぇイケメン。さらに社交性もある。最初から友達も多く、リア充が集まる1軍のメンバーと言ってもいい。

 本人がイケメンの自覚なしはどこの世界も一緒だけど。


 顔も対応もイケメンな主人公が美人姉妹とイチャイチャ……。


 別に羨ましくなんか……。


「結斗」

「ゆいくーん♪」

「ふ、2人とも落ち着いて……っ。こ、ここ教室だから……」


「………」


 あかん。嫉妬を通り越して口から砂糖が出てきそう……。




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