第17話 十九日目

 俺は子どもの死体を風呂から引き出した。

 子どもが風呂場で転んで頭を打って、亡くなったんだ。このままなら事故だと言える。警察に電話すべきだろうか?でも、彼がここにいるのを知っている人はいない。


 横たわっていると、まるで眠っているようだった。

 俺は子どもを風呂場に放置して、ベッドルームに戻った。


 どうしよう。

 俺は布団をかぶって、そのまま寝てしまった。

 これは夢なんだ。

 何度も言い聞かせる。



 俺は夢を見た。

 リビングに行くと、ソファーに痩せて黒ずんだ子どもが座っていた。

 俺の好きなタイプだ。物静かで目が大きくて、病人のようだった。


「上田君。またやっちゃったね。これで二人目だね」

 俺の同級生だ。俺はまだ名前が思い出せなかった。

「俺が殺したんじぇねえって。事故だよ。勝手に転んで死んだんだ」

 俺は彼にわかってほしくてそう言った。

「上田君は変わらないね。人を傷つけることばかりしてる」

「ごめん。それより、お前、何で死んだの?俺は好きだったのに。どうして俺のことを好きになってくれないんだよ!」

「金を渡せば好きになってもらえると思ってるんだろ?馬鹿だね」

「じゃあ、どうしたらいい?何でもする」

「じゃあ、子どもを10人殺したら、付き合ってあげてもいいよ」

 その人は笑った。

「まさか・・・そんなのできるわけない」

「連絡してくれるのを待ってたのに・・・上田君は何も言ってくれなかった。虐められていても助けてくれなかった。俺は君に遊ばれたと思って、死んだんだ」

「違う。親に怒られて・・・連絡できなかった」


 俺は泣きながら目を覚ました。

 彼が俺からの連絡を待ってたって?

 嘘だろう?


 なら、なぜあんな遺書を残したんだろう。

 俺を公開処刑して、永遠に罰するため?

 世間に向けて恥をかかせて、社会的な制裁を加えるため?


 君のお母さんは、俺のやったことを誰にも言わなかった。

 息子の恥でもあるからだ。

 あの時、俺は心底自分が嫌になった。


 そのせいで、俺は結婚もしなかった。

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