第5話

 彼女に裾を持たれながら町内を歩くなど、俺はどれだけ愚かだろうか。町内では稲光または毛細管現象の如く噂は広がる。


 勇斗は迷っていた。この掴んだ手を振り解いて逃げるか、否か。しかし、それが汚名返上になる確信、それが未だ無いのである。そもそも絶望に染まった精神に、汚名といった概念があるのか、些か私の疑問でもあるのだ。故にこう囁くのだ。彼女に溺れても良いのではないかと。甘えても良いのではないのかと。

 しかし勇斗は拒んだのである。ぎりぎり持ち合わせた偽善という手札で、対処したのである。なんて哀れでしょうか。そう勇斗は思った。


 女は笑った。「顔色が比べて良くなったね」と言って。

 山々の隙間から、橙の光が差し込んでいた。一方で、空には青と赤のグラデーションが塗ってある。農家は帰り支度をして、努力未来を持ち帰った。いつも通りの帰り道。でも視界には少女が居る。

「明日は月曜だね」

 不意にそう空を見た。

 俺は適当に生返事を返した。


「私、深雪みゆきって名前なんです。明日の朝、一緒に学校に行きましょうね。私待ってます」

 俺の目線には自宅があった。

 少女は、袖から手を離し代わりに手を握った。

「待ってます。そうですよ。待ってますね。絶対に来てください」

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