第3話

 無論、勇斗は自身に節操がないと感じた。しかし、この感触はあの頃のような夢心地であり、紛れもない事実でもある。

 死人に口なしと思った。死別故の特権だとも思った。入籍していないカップルの浮気は法では裁けない。そんな事さえも思ってしまう。


 逃げてしまってもいいのだろうか? 


 現実逃避、投射、代用、を筆頭にするこれら精神における逃げのパターンを挙げるならば、俺は代用を今選ぼうとしている。そして現代には「どうしたん? 話聴こか」と称される人物がいる。現状、自分がその標的であることは変わらない。

 疑似的な吊り橋効果だろうか? 分からない。だが、そんな自分に嫌気がした。


 何故、名前やハンドルネームを知っているかなんて、どうでも良い。ただ、手遊びに使っていたガラス玉を失くした時のように、代わりを探しているだけである。

 俺は、彼女にフィードバックを返した。


 温かみを感じた勇斗は笑みを浮かべていたのである。罪悪感など見て見ぬフリをして、温かかな安心を、それも滑稽に感じていたのである。それを勇斗は嘲笑していた。

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