第2話

 俺は不思議とそれを聴いた事のあると思ったのである。ただ、顔を上げ、それを見るに青空如く、有るのか無いのかはっきりしない存在が居た故に、少女と呼ぶべき存在は温かく笑った。

「こんな朝から、公園のベンチで泣いてどうしたのですか? "石英"さん?」

 年頃の女は俺のハンドルネームを口にした。しかし、今この時点で何故俺が、"石英だと分かったのか"などと考える余裕はない。


 女は続ける。

「最近、オノミ推の見でも配信しないので心配していたんですよ? 私。でも生きているだけで安心しました」

 と囁きかけ手を差し出してきたのである。


 その女は、黒いセミロング髪を揺らして見慣れない顔を被っている。そしてそれは美人だなと思った。


 公園横の河で魚が跳ねた気がした。しかし相変わらず、苔生しったが優雅に泳いでいる。川鵜はその翼を拭いた。そんな日常を俺は少し変わるかもしれないと悟ったのかもしれない。


「ほら、立って。泣いてたって始まらない。笑って忘れて前だけ見て皆を笑顔にしてくれれば幸せなのですよ? そうでしょ? "勇斗君"。私がに愛してあげます。ほらハグだって」

 女に密着された。只管にそれは、粘度の高い麻酔なり俺の思考を鈍らせ緩ませたのである。

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