第55話 フォミィからの申し出

 フォミィを裏切った元カレとの交際時期に、彼がフォミィに贈り続けていた花が、訪問時に僕が持参してしまった、ピンク色のスイートピーだった……

 

 好印象で接近したつもりが、まさか、そんなお粗末な結果になっていたとは……


 謝ろう!

 僕には、全く悪意が無くても、本人を傷付けたのは確かなのだから……


「重ね重ね申し訳ありません! フォミィさんに対する配慮が足りなくて、不快な思いにさせてしまいました」


「いえ、知らなかったのですから、ラーニさんは悪く無いので、謝らなくてもいいです! それに、ラーニさんがピンク色のスイートピーを選んだのは、私の印象からだったという事を知ったので……元婚約者のような軽薄な思いから、贈られたものではないと分かり安心しました」


 軽薄な思い……

 フォミィは、元婚約者に対しては、もうそう捉えられるくらい吹っ切れていたんだ。

 それを知っただけでも、なぜか喜ばしく思えてしまう。

 

「安心してもらえて、こちらも良かったです! では……」


 良い印象のまま退散するのが一番だ!


「あの……ラーニさん、まだ、待って下さい……」


 まだ話が残っているのか……

 終わったと思って、また早合点してしまった。


「あっ、まだ何か、僕は粗相していましたか……?」


「いえ、ただ、あの……ラーニさんの能力を複製させて頂けるって、おっしゃってくれたので」


「ああ、はい、こんな能力なんかで良かったら、どうぞ、複製して下さい」


 僕の能力……そうか、他の能力を受けた場合、それ以前の能力は消失してしまうという事だったな。

 それならば、また、フォミィの必要に応じて複製に協力しよう。


「私は、ラーニさんと、同じ能力を使って一緒にお仕事をして行きたいのです!」


「仕事上のパートナーですか? そうですね、今までは単独で行っていましたが、その方が効率が上がるのでしたら、ご一緒するのも悪くなさそうです」


 フォミィが、そんなに、この528hz音声に共感してくれていたとは!!


 テレパシーに比べたら、取るに足らないような能力だというのに、フォミィに共感してもらえたというのは、この上も無く喜ばしい!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る