第53話 叱責ではなく
「あの……ラーニさんが、言葉で話してくれないのでしたら、私は、思考を読むしか出来ませんが……」
「構わないですよ。所詮、言葉は誤魔化せても、思考は誤魔化せませんから。その方が、フォミィさんにとっても、手っ取り早いでしょう?」
思考を読む事を改めて明言されなくても……
そりゃあ、僕だって、本音はフォミィに心を読まれたくなかったが、今までさんざん読まれて来たなら、今更ジタバタしても始まらない!
「いいえ……私は、ハムハムを亡くした時、本心では無いかも知れないと分かっていても、ラーニさんとの会話で救われました! ラーニさんの528hz音声は、私にとって癒しなので、是非、言葉を交わして頂きたいです!」
「そんな風に褒めて頂いて、光栄です。僕には、それくらいしか取り柄が無いので……」
思わず、卑下せずにはいられなかった。
今や、フォミィの方が、僕なんかよりずっと有能な人材なのだから……
「私は、ラーニさんのその声は、本当に素晴らしい能力だと思います! だから、私にも、その能力が開花したと思えた時は、とても嬉しかったです!」
僕と同じ能力が現れて、嬉しかった……?
それによって、僕はフォミィの結婚相手から除外されるというのに……
そうか、僕なんかは、最初っから、フォミィにとっては、論外だったという事だな……
「そうでしたか。こんな能力で良かったら、いつでも、また複製して下さい」
心はズタズタだったが、穏便にかわしておいた。
テレパシーに比べたら、僕の能力など下の下でしかないのだから、フォミィがまた、この程度の能力を複製したがるはずがない……
今まで、自分がこんなに卑屈な人間とは思わなかった!
こんな事なら、のこのこと、合コンなるものに同行しなけりゃ良かった!
「ありがとうございます。とても、嬉しいです!」
僕の心の声を読めているはずなのに、それは皮肉のつもりで言っているのか?
まるで、フォミィは僕の心の声に関しては、全く気に留めずに、僕の言葉だけに反応しているように思える。
フォミィが呼び止めた時は、花言葉の件で、物申す的な感じだったが……
尋問されるのかと思ったら、528hz音声について、フォミィが褒めちぎって来た。
何か他に、魂胆が有るのかとも考えたくなるが……
まあ、彼女が最初に複製した能力が、僕のだったから、僕は言わば、恩師的な立ち位置ゆえに、お世辞を返したと捉えるのが無難だろう。
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