第51話 その場から消えたいくらいの羞恥心

 僕は、てっきり、フォミィが、僕と同じ528hz音声だとばかり思っていたから、こうして、安心しきって、ここに参加していたというのに!


 これまでの僕らの心境変化を全て、フォミィは、その能力で手に取るように察知してしまっていたとは……


 こんなのは懲り懲りだ!


 とてもじゃないが、それを知った上で、ここで、雑談するなんて心の余裕は、僕に無い!


 一刻も早く、ここから退散したい!


「でしたら、僕の今の心境も、全てフォミィさんにはお見通しですね。そろそろ、お開きにしますか」


 フォミィがテレパシストだと知った途端、動揺を隠せない男性陣の中で、僕が先に言葉を発した。


「そうだな……確かに、ちょっと状況が変わったので……」


 僕の声を受けて、ワーサルも逃げ腰になった。


「おやおや、二人とも、それくらいの事で退散ですか? 俺は、フォミィさんの能力が何であれ構いませんよ!」


 イーマンは、フォミィのパートナーを熱望している様子を隠さず、僕らに対し挑発した上で、座り続けている。


 初っ端からの男性能力者達のフォミィ目当て見え見えな言動に、ワコネやミンノも不愉快な様子で、退散しようとしている。

 

 ……となると、フォミィとワーサルが一対一で取り残される事になるのか。

 それなら、お二人でお好きにどうぞ!


「待って下さい! あっ、いえ……ラーニさんだけ、待って下さい!」


 僕だけ……?

 どういう事だ……?


 それを聞いて、ますます不満度そうに、ワコネやミンノはそそくさと出て行った。


「えっ、フォミィさんの能力を知っても動じない僕ではなくて、ラーニですか?」


 納得出来なそうなイーマン。

 

「はい……ラーニさんだけです!」


 きっぱりと言い切られ、イーマンは仕方なさそうに肩を落とした。


「了解しました、フォミィさん。念の為確認しますが、こいつは残しますか?」


 ワーサルは気を利かせたのか、イーマンを指差して、フォミィに尋ねた。


「いいえ、私は、ラーニさんとだけ話したいので」


「はいはい! どうぞ、お二人でごゆっくり!」


 フォミィの御指名とあらば、さすがに諦めた様子で肩を落とし、ワーサルと店を出たイーマン。

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