第49話 フォミィの解せない発言

 そんな、ハムスターが優位になっているフォミィを落とすのは、候補の男性能力者達にとって、容易ではないだろう。

 ハムスターのように、口出しして来ない一匹の存在に、夢中になっていたのだから、対人間の場合も、複数も望まないのはフォミィらしい。


 ただ、その一人を選ぼうとしている相手に対しても、彼女の中では、元の婚約者像やハムスターという存在のイメージが、理想像として残っている。

 それより優れた相手でないと本人も認めないだろう。


「具体的に、フォミィさんは、どんな男性能力者を望んでいるんですか?」


「フォミィさんは、何か相手に望む能力とか有るんですか?」


 ワコネやミンノに対しては、しつこく尋ねなかったワーサルとイーマンが、ほぼ同時に、フォミィだけに質問を浴びせた。


「私は、別に、どんな能力を持っている方でも構わないです」


 考えるような時間も無く、即答したフォミィ。

 どんな能力者でも構わない……

 つまり、能力が被っている僕以外は、誰でも彼女の候補者になれるという事だ。

 

 どうして、僕の能力はフォミィと被っているのだろう?

 まあ、僕の場合、イーマンと違って、第一印象も、その後の印象も良からぬ感じだから、それだけが障壁では無いのかも知れないが……


「といっても、同じ能力を持つ相手は御法度だからな。フォミィさんの能力は、こいつと同じ528hz音声でしたよね?」


「では、ラーニを除いた、俺達全てに結婚できる可能性が有るって事ですね!」


 ワーサルとイーマンが歓喜の声を上げた。

 そんな露骨に喜ぶなんて、ワコネやミンノを前にして、失礼だろう!

 彼女達の身になって、つい考えてしまうのは、自分が、その候補から外れているという状態ゆえだろうか?


 つい卑屈な気持ちになり、この場にいるのも苦痛になっていると、一瞬、フォミィと目が合った。

 

 何だ……?

 

 僕への憐れみのつもりだろうか?

 余計なお世話だ!


 僕は別に、元々、女性能力者との結婚する事など望んでいたわけではない!

 一婦多夫なんて形態になってまで、結婚する価値など見い出せてないし!


 それが、例え、フォミィであっても同じだ!

 ……いや、同じだとばかり思っていた。

 僕は、例え、能力がフォミィと被って無くても、一婦多夫の中の一夫になるつもりなど毛頭なかった。


 けど、フォミィは、他の女性能力者達とは違って、一般人のように一夫一婦を望んでいる。

 だとしたら、僕の気持ちは揺らいでしまっている。

 

 もしも、自分と能力が被っていなかったら、ワーサルやイーマンのように喜んで候補者に志願していただろう。

 だから、今の彼らの喜び勇んでいる様子を見ているのが辛いんだ!


 そんな僕の心情を悟られたくないのに、フォミィは僕を見て、それが伝わったかのような表情を見せて来た。

 

「いえ、ラーニさんも含めてです……」


 今の発言は何なんだ……?


 同情からか?

 それとも、僕の反応を見ようとしているのか……?

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