第46話 思わぬ流れに
ワーサルやイーマンの言っていた通り、フォミィは、適齢期の女性能力者達の中では、トップクラスの人気だった。
社内で、たまにすれ違う事が有るが、フォミィの周囲は、常に結婚希望者の男性で取り巻きのようにごった返し、その男性達との身長差のせいで、彼女の顔すら隠れてしまっているほどだった。
それでも、その群衆の隙間から僕の姿に気付いた時のフォミィは、ハッとなったり、挨拶をしようとしている気配を感じられた。
「今、フォミィは、お前の方を見ていただろう? あの後、何か、話しかけられたりしたのか?」
フォミィを狙っている一人、ワーサルが、興味津々に探りを入れて来た。
「いや、特に何も……」
「そうだろうな~! 彼女の視線は、ラーニじゃなく、一緒にいる俺の方を見ていたに違いないから!」
自信たっぷりなイーマン。
多分、フォミィが選ぶ多夫の一人に入れると思い込んでいるのだろう。
「おや、言ったな~、イーマン! そんな風に言うからには、お前は、何かフォミィにアプローチしているのか?」
「よくぞ、聞いてくれた! 実は、この前、デートに誘ったんだ!」
自慢気に、右手で自分の胸を叩いて言ったイーマン。
だが、デートとは……?
「デートって、何だ……?」
ワーサルや僕が知らないという事は……
能力者ではなく、一般人の風習の一つなのだろう。
「一般人は、能力者と違って、結婚前にデートという交際期間を設けて、相手が自分に合うかどうかの品定めをするんだ! 俺も一般人時代は、片っ端から声かけて、デートしまくっていた! あの頃が、懐かしいな~!」
一般人には、結婚前に、そんな風に考慮出来る準備期間が有るとは!
今まで、自分の対象者達は、カップリングにすんなり成功して、即、結婚というパターンが多かったが、それ以外の一般人達は、そうやって相手を見極めていたんだな!
「そうなのか~! それは、羨ましいな~! けど、適齢期の女性能力者に対して、そんな抜け駆けする事が許されたのか?」
「いやいや、いくら俺でも、単刀直入に、デートとは言ってない! 仕事上プラスになるよう、一般人の生活を理解する為に、フォミィから話を聴くという名目で承知させた! 女性能力者と一対一のデートっていうのは御法度だから、フォミィにも女性能力者二人連れて来てもらって、俺らも三人で行くのさ! まあ、デートというよりは、合コンという形になるが、どうせ、お前らも興味有るだろう?」
俺らも、三人で……?
合コン……?
また訳の分からない言葉が出て来たが……
要するに、僕も、フォミィとイーマンのデートというものに、同行する事になるという事なのか……?
「その三人って、つまり俺とラーニも一緒って事か?」
「当然だろ! まずはラーニの名前を出した方が、フォミィも気を許すだろうと思って!」
「お~! イーマン、それはお手柄だな~!」
自分も、デートというものに便乗出来ると知り、大喜びのワーサル。
僕の名前を出す事で、フォミィがOKした……?
それは、つまり、あんな風に邪険な態度を示した後でも、僕はフォミィから避けられてはいないという事なんだ……
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