第43話 フォミィの能力

 フォミィは、突然授かったその能力に対し、じっくりと考えるまでもなく、すぐにでも自分の能力を生かしてゆこうとしている!


 まるで、女性能力者として生きる事が予め分かっていたかのような、その決断の潔さ。

 僕の想像が追い付かず、能力者として長年生きていながら、彼女の気持ちを見抜く事すら出来なかったのだから……


 ところで、彼女の能力とは、どういった種類のものだろう?


 僕のビジョンを読み取ったとすると、「クレアボヤント」(透視能力者)の可能性が強いが……

 

 ここで、矛盾が生じる。

 僕には、自身の生まれて来た目的を見る能力は備わっていない。


 なぜ、僕は、それを見る事が出来たのだろう?

 フォミィは、自分が見ているシーンを僕に、転写する能力を持っているのだろうか?

 

 いや、それも違うと言い切れる!

 何故なら、僕が見ていた恋人達は、皆、過去に自分がカップリングに成功した面々だったのだから。

 彼女が見ていたのは、おそらく、彼女の未来像であり、僕が見て来たシーンとは、そういった詳細までは一致していないだろう。


 だとしたら、彼女が見たのは、彼女自身の能力ではなく、僕の528hzの声の効果によるものである可能性が強い。

 そう、僕は、フォミィの目的に到達する事が出来ていた!

 

 ただ、その場合は、僕が見たものへの疑問が残る。

 それは、明らかにフォミィからの働きかけによるものだろう。

 フォミィの能力によって、僕が自身の生まれた来た目的を見せられた事になる。


 ……という事は、フォミィもまた528hzの発声が出来、それによって、僕もリラックスさせられ、生まれて来た目的を見せられたと考えるのが、最も妥当な線だろう。

 

 フォミィも、僕と同じ528hzの声の持ち主……


「フォミィさんは、今まで、この能力を発動させた事は有りましたか?」


 彼女は、これまで、知らず知らずのうちに、その能力を使って、周囲をリラックスさせたりしていたのだろうか?


「いいえ、私が普段接している人達から、そんなビジョンが見えて来るなどとは聞いた事が無かったので、多分、これが初めてだと思います」


 フォミィの口調から隠している様子は無い。

 多分、能力者という事すら、思いもよらなかったのだから、それは本当だろう。


 能力が分かり、生まれて来た目的も分かったというところで、もう1つ残されている問題は……


「これで、あなたは、生まれて来た目的を知る事が出来ました。あとは、運命の相手ですが、これについては、どうしますか?」

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