第42話 困惑のフォミィ
嬉しそうな表情は、今のフォミィの顔パーツどれをとっても見当たらない……
明らかに戸惑いを抑え切れない様子だけが感じ取れる……
「フォミィさんが、驚かれるのも無理は有りません。正直なところ、僕もまだ、こんな結果になった事を受け入れ難いですから……」
「私が、能力者だったなんて……」
女性能力者は、自分の能力を授かった時点で、大歓迎の場合と絶望する場合の両極端な思いを抱く事になる。
男性能力者に比べ、かなり希少価値の高い女性能力者。
誰かの役に立って、しかも、逆ハーレム状態となれるのだから、虚栄心の高い女性達にとっては、この上も無く有り難い能力だろう。
ただ、目立つ事を恐れたり、一婦多夫の状態を嫌悪している能力者女性も少なからず存在している。
その場合は、授かった特殊能力を一生封印して、一般人女性として生きる事になる。
フォミィは、どう見ても、後者のタイプだろう……
そんな能力などは、彼女のようなタイプの人間にとっては、大変ありがた迷惑であり、きっと、何事も無かったかのように、能力を放棄したい衝動に駆られている事だろう。
幸い、この事実を知っているのは、フォミィ自身と僕のみだ……
僕さえ口外しなければ、フォミィは、一般人女性として生きて行ける。
フォミィは戸惑っている。
彼女を苦悩から解放させるよう、早く伝えなくては!
「フォミィさんのお気持ちは分かります。突然、能力が芽生えても、今までの生き方を貫きたい気持ちも分かります」
でも、彼女は、対象者達を沢山カップリングさせているビジョンを見せられていた。
僕が、こう言ったところで、何の気休めにもならないのかも知れない。
「いえ……そんな事はありません!」
「えっ……?」
聞き間違いだろうか?
僕に反論して来たような気がしたが……
「私は、能力が無いままでしたら、もちろん、このままひっそりと、ここで一生を終えるつもりでおりました。でも、こんな風に見せられてしまったら……」
何を言っているんだ、フォミィは……?
こんなビジョンのワンシーンを見ただけで、彼女の今まで過ごして来た日常が損なわれるのも厭わないのか?
今なら、まだ無かった事にするのが可能だというのに……
能力を封印して、今まで通り、この地でひっそりと過ごす事を望んでいないのか……?
このフォミィが……?
「あの……ご存知無いかも知れないですが、もしも、一度でも、能力者である事を公言した場合は、もう、元には戻る事は出来ないんですよ! 今なら、知っているのは、フォミィさんと僕だけしかいないので、この能力は知らなかった事にして、ずっと隠し通す事は可能なんです!」
必死になって、テンパりながら、僕は、フォミィの能力を封印する事を勧めた。
が、僕の助言は受け入れられる事にはならなかった……
僕なりに、彼女の気持ちを考えたつもりだったその提案でも、フォミィの硬い決意を揺るがす事は出来無かった……
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